「尊敬語と謙譲語、どっちも丁寧な言い方に見えて違いがわからない」
そんな人は少なくありません。
実際、この2つはどちらも相手への敬意を表す言葉なので、見た目だけでは区別しにくいです。
ただし、考え方は意外とシンプルです。
尊敬語は“相手側の動作を高める言い方”、
謙譲語は“自分側の動作をへりくだって言うことで、相手を立てる言い方”です。
この記事では、初心者でも迷わないように、できるだけやさしく整理していきます。
まずは「誰の動作なのか」が見分けられるようになれば、かなり理解しやすくなります。
尊敬語と謙譲語の違いを一言でいうと
結論から言うと、違いは次のとおりです。
尊敬語
相手や、話題にしている人の動作・状態を高めて表す言い方
謙譲語
自分や自分側の人の動作を低く表し、その動作の向かう相手を立てる言い方
たとえば、同じ「行く」でも使い分けは変わります。
- 先生が行く
→ 先生がいらっしゃる
これは先生の動作を高めているので、尊敬語です。 - 私が先生のところへ行く
→ 私が先生のところへ伺う
これは自分の動作をへりくだって言い、先生を立てているので、謙譲語です。
迷ったら、まず「その動作をするのは誰か」を見てください。
相手側の動作なら尊敬語、自分側の動作なら謙譲語になることが多いです。
まずはこの比較表だけ覚えれば大丈夫
| 比べるポイント | 尊敬語 | 謙譲語 |
|---|---|---|
| だれの動作に使うか | 相手・相手側・第三者 | 自分・自分側 |
| どうやって敬意を表すか | 相手の動作を高める | 自分の動作をへりくだって言う |
| 敬意が向かう相手 | 動作をする相手側の人 | その動作の向かう先の相手 |
| 例 | いらっしゃる・おっしゃる・ご覧になる | 伺う・申し上げる・拝見する |
この表をもっと簡単に言うなら、次のように覚えるとわかりやすいです。
尊敬語=相手を上げる
謙譲語=自分を下げて相手を立てる
このイメージが入るだけで、かなり混乱しにくくなります。
なぜ尊敬語と謙譲語はややこしいのか
尊敬語と謙譲語が難しく感じる理由は、主に3つあります。
どちらも丁寧に見えるから
「いらっしゃる」も「伺う」も、どちらも普通の会話より丁寧です。
そのため、丁寧なら全部同じに見えてしまうことがあります。
どちらも特別な言い換えがあるから
たとえば、
- 行く → いらっしゃる/伺う
- 言う → おっしゃる/申し上げる
- 見る → ご覧になる/拝見する
このように、元の動詞が別の形に変わるので、慣れないうちは混同しやすいです。
「お」「ご」がどちらにも出てくるから
たとえば、
- お読みになる → 尊敬語
- お持ちする → 謙譲語
どちらにも「お」がついています。
そのため、「お」「ご」がついているから尊敬語」とは限らないのが、ややこしいところです。
迷ったときの見分け方は3ステップ
尊敬語と謙譲語で迷ったら、次の順番で考えると判断しやすくなります。
1 誰がその動作をするのかを見る
まずは主語をはっきりさせます。
- 先生が読む
- 私が先生に話す
- お客様が来る
ここで動作をする人が、先生・お客様のような相手側なら尊敬語、私のような自分側なら謙譲語を考えます。
2 相手を高めるのか、自分をへりくだるのか考える
次に、「その人を高く言うのか」「自分を低く言うのか」を見ます。
- 先生が話す → 先生がおっしゃる
相手を高めているので尊敬語 - 私が先生に話す → 私が先生に申し上げる
自分をへりくだっているので謙譲語
3 自分側の人を高くしすぎていないか確認する
ここが大事です。
社外の人や目上の人に対して、自分の家族や自社の人を高く言うのは基本的に避けます。
たとえば、社外の人に対して
- × 父がいらっしゃいます
- × 部長がおっしゃいました
と言うと、自分側の人を持ち上げている感じになり、不自然になりやすいです。
この場合は、
- ○ 父が行きます
- ○ 部長が申しておりました
のように言うほうが自然です。
よく使う尊敬語と謙譲語の一覧
よく出てくるものだけ、先に押さえておくと便利です。
| 普通の言い方 | 尊敬語 | 謙譲語 |
|---|---|---|
| 行く | いらっしゃる・おいでになる | 伺う・参る |
| 来る | いらっしゃる・お越しになる | 伺う・参る |
| 言う | おっしゃる | 申し上げる・申す |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 聞く・尋ねる | お聞きになる・お尋ねになる | 伺う |
| 食べる・飲む | 召し上がる | いただく |
| する | なさる | いたす |
| 会う | お会いになる | お目にかかる |
| もらう | お受け取りになる など | いただく |
| 知る | ご存じだ | 存じる・存じ上げる |
全部を一度に暗記しなくても大丈夫です。
まずは行く・来る・言う・見る・聞くの5つから覚えると、日常でも仕事でも使いやすいです。
間違えやすい表現と正しい言い方
ここでは、特に間違えやすいパターンを整理します。
相手の動作なのに謙譲語を使ってしまう例
これはとても多いミスです。
× 課長、そのファイルも会議室にお持ちしますか
○ 課長、そのファイルも会議室にお持ちになりますか
「お持ちします」は、自分が持つときの言い方です。
課長が持つかどうかを聞くなら、相手の動作なので尊敬語を使います。
同じように、
× 担当者に伺ってください
○ 担当者にお聞きください
○ 担当者にお尋ねください
も注意したい表現です。
「伺う」は自分側の行為をへりくだって言う語なので、相手に向けて使うとずれてしまいます。
自分側の人に尊敬語を使ってしまう例
こちらもよくあります。
× 父は来週いらっしゃいます
○ 父は来週行きます
× 部長がおっしゃっていました
○ 部長が申しておりました
相手に配慮しようとして敬語を強くしすぎると、かえって不自然になることがあります。
「丁寧にしたい」気持ちと「誰を立てるか」は別だと考えるとわかりやすいです。
二重敬語にも気をつける
丁寧にしようとして、敬語を重ねすぎる場合もあります。
× お読みになられる
○ お読みになる
ただし、日常でよく使われる形の中には、慣用として定着しているものもあります。
とはいえ、初心者のうちは敬語を重ねすぎず、シンプルに言うほうが安全です。
尊敬語と謙譲語が一気にわかる例文集
同じ意味でも、主語が変わると敬語の種類も変わります。
セットで見ると違いがつかみやすくなります。
来る・行く
- 先生が学校にいらっしゃる
- 私が先生のところへ伺う
言う
- 先生がそのようにおっしゃる
- 私が先生に事情を申し上げる
見る
- 先生が資料をご覧になる
- 私が資料を拝見する
聞く・尋ねる
- 先生が学生の話をお聞きになる
- 私が先生に予定を伺う
食べる・飲む
- 先生が昼食を召し上がる
- 私がお菓子をいただく
このように、同じ元の動詞でも「相手がするか」「自分がするか」で形が変わると考えると、かなり整理しやすくなります。
丁寧語との違いも知っておくとさらにわかりやすい
尊敬語と謙譲語が混乱する人は、丁寧語も一緒に整理すると理解が進みます。
丁寧語は、主にです・ますのように、話し方そのものを丁寧にする言い方です。
たとえば、
- 行く → 行きます
- 読む → 読みます
これは丁寧語です。
一方で、
- 先生がいらっしゃる → 尊敬語
- 私が伺う → 謙譲語
となります。
つまり、
- 行きますは丁寧に言っているだけ
- いらっしゃるは相手を立てている
- 伺うは自分をへりくだっている
という違いがあります。
ここを区別できると、敬語全体が一気に見えやすくなります。
まとめ
尊敬語と謙譲語の違いは、次の2点で考えるとわかりやすいです。
1つ目は、誰の動作か。
相手や相手側の人の動作なら、まず尊敬語を考えます。
自分や自分側の人の動作なら、まず謙譲語を考えます。
2つ目は、誰を立てているか。
尊敬語は相手の動作そのものを高めます。
謙譲語は自分の動作をへりくだって言い、相手を立てます。
初心者のうちは、次の形で覚えるのがおすすめです。
- 先生が来る → いらっしゃる
- 私が先生のところへ行く → 伺う
- 先生が言う → おっしゃる
- 私が先生に言う → 申し上げる
まずはこの4つが自然に使い分けられれば十分です。
敬語は、難しい言葉を増やすことよりも、相手との関係に合った言い方を選ぶことが大切です。
迷ったときは、無理に難しい表現を使うより、主語を確認して、シンプルに正しく言うことを意識してみてください。
