「こと」は漢字で 事 と書くべきか、ひらがなで こと と書くべきか迷いやすい言葉です。
結論から言うと、基本の使い分けは次のとおりです。
| 表記 | 使う場面 | 例 |
|---|---|---|
| こと | 直前の言葉を名詞化する場合 | 勉強することが大切です |
| 事 | 出来事・事件・用事・事柄を表す場合 | 大変な事が起きました |
迷ったときは、「出来事」「用事」「事柄」に言い換えられるなら事、言い換えにくいならこと と考えると判断しやすくなります。
「こと」と「事」の違いは何か
「こと」と「事」は、どちらも「こと」と読みます。
ただし、文章の中での役割が違います。
ひらがなの「こと」は直前の内容を受ける言葉
ひらがなの「こと」は、それだけで具体的な意味を表すというより、直前の言葉を受けて名詞のようにする働きがあります。
たとえば、次の文を見てください。
毎日歩くことは健康によい。
この「こと」は、「歩く」という動作を名詞のように扱うために使われています。
「歩くこと」=「歩くという行為・内容」という意味です。
このように、動詞や文を受けて、ひとまとまりの内容にする場合は、ひらがなの「こと」 が自然です。
漢字の「事」は出来事・用事・事柄を表す言葉
漢字の「事」は、出来事・事件・用件・事情など、ある程度具体的な内容を指すときに使います。
たとえば、次のような文です。
大変な事になった。
事の真相を調べる。
今日は大事な事を話します。
この場合の「事」は、「出来事」「問題」「内容」「事柄」のような意味を持っています。
つまり、「事」そのものが名詞として意味を持っている場合は、漢字で書きやすい ということです。
「こと」はひらがなで書くのが基本
文章を書くとき、多くの場面では ひらがなの「こと」 を使います。
特に、次の形では「こと」と書くのが自然です。
「〜すること」はひらがな
動詞のあとに続く「こと」は、ひらがなで書くのが基本です。
| 自然な表記 | 避けたい表記 |
|---|---|
| 勉強することが大切です | 勉強する事が大切です |
| 早く寝ることを心がける | 早く寝る事を心がける |
| 人に相談することも必要です | 人に相談する事も必要です |
「勉強すること」「寝ること」「相談すること」は、どれも動作や内容を名詞化しています。
この場合、「出来事」という意味ではないため、漢字の「事」にすると少し硬く、不自然に見えることがあります。
「〜したことがある」もひらがな
経験を表す「〜したことがある」も、ひらがなで書きます。
京都へ行ったことがある。
その映画を見たことがない。
一度だけ話したことがあります。
ここでの「こと」は、過去の経験内容を受けています。
「行った事がある」と書いても意味は通じますが、一般的な文章では 「行ったことがある」 のほうが自然です。
「〜ということ」もひらがな
「〜ということ」は、前にある文全体を受ける表現です。
彼が来ないということは、何か理由があるのだろう。
続けるということは、簡単ではありません。
失敗したということだけで、全部が無駄になるわけではない。
この「こと」も、特定の出来事を指すというより、前の内容をまとめる働きをしています。
そのため、ひらがなで書くのが自然です。
「ことができる」「ことになる」「ことにする」もひらがな
次のような定型表現でも、「こと」はひらがなにします。
| 表現 | 例文 |
|---|---|
| ことができる | 英語を話すことができる |
| ことになる | 来月から働くことになった |
| ことにする | 毎朝散歩することにした |
| ことがある | たまに寝坊することがある |
| ことはない | そこまで心配することはない |
これらは、日常文・ビジネス文・説明文のどれでもよく使います。
基本的には 「〜ことが」「〜ことに」「〜ことは」 の形になっている場合、ひらがなを選ぶと読みやすいです。
「事」は漢字で書くと意味がはっきりする
一方で、「事」と漢字にしたほうが意味が伝わりやすい場面もあります。
「出来事」「事件」「問題」を表すときは事
次のように、具体的な出来事や問題を表す場合は、漢字の「事」が自然です。
大変な事が起きた。
事の発端は小さな誤解だった。
事が大きくなる前に相談した。
こんな事になるとは思わなかった。
この「事」は、「出来事」「事件」「問題」に近い意味です。
ひらがなで「こと」と書いても間違いとは限りませんが、漢字にすると、具体的な出来事としての意味が強くなります。
「用事」「仕事」「食事」など熟語では漢字
「事」が他の漢字と組み合わさって熟語になっている場合は、基本的に漢字で書きます。
| 漢字で書く語 | 意味 |
|---|---|
| 用事 | 用件、しなければならないこと |
| 仕事 | 働くこと、作業 |
| 食事 | 食べること、食べ物 |
| 返事 | 答え、返信 |
| 行事 | 決まって行われる催し |
| 出来事 | 起こったこと |
たとえば、「用こと」「仕こと」のようには書きません。
熟語として定着しているものは、漢字表記を使いましょう。
「事を荒立てる」「事は重大」など慣用的な表現
次のような表現では、漢字の「事」が自然です。
事を荒立てたくない。
事は重大である。
事の次第を説明する。
事ここに至っては仕方がない。
これらの「事」は、状況・事情・問題全体を指しています。
やや硬い表現ですが、ビジネス文書や説明文でも使われます。
「こと」と「事」で意味が変わる例
「こと」と「事」は、表記によって受ける印象や意味の焦点が変わることがあります。
「大切なこと」と「大切な事」の違い
| 表記 | ニュアンス |
|---|---|
| 大切なこと | 内容・考え方・行動などを広く指す |
| 大切な事 | 具体的な用件・事柄を指す印象が強い |
たとえば、次の文では「こと」が自然です。
健康のために大切なことは、睡眠をしっかり取ることです。
この場合、「大切な内容・ポイント」という意味なので、ひらがなが読みやすいです。
一方で、次の文では「事」も自然です。
会議で大切な事を伝えます。
この場合は、「重要な用件」「重要な内容」という具体性があるため、「事」と書いても違和感がありません。
「考えたこと」と「考え事」の違い
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| 考えたこと | 過去に考えた内容 |
| 考え事 | 頭の中で悩んでいること、思案 |
例文で比べると、違いがわかりやすくなります。
その問題について考えたことがあります。
彼は考え事をしていて、返事をしなかった。
「考えたこと」は、考えた経験や内容を表します。
「考え事」は、悩みや思案そのものを表す名詞です。
「したこと」と「した事」の違い
「したこと」は、経験や行動内容を表すときに使います。
人を傷つけるようなことはしたくない。
子どものころに同じことをしたことがあります。
一方、「した事」と書くと、具体的な行為や出来事を強調する印象になります。
彼がした事は、決して軽く見てはいけない。
このように、行為の内容を一般的に述べるなら「こと」、問題性のある具体的な行為として示すなら「事」 が合いやすいです。
迷ったときの見分け方
「こと」と「事」で迷ったら、次の3つを確認しましょう。
「出来事」に置き換えられるか
まず、「こと」を「出来事」に置き換えてみます。
大変なことが起きた。
大変な出来事が起きた。
このように置き換えられるなら、「事」と書いても自然です。
勉強することが大切です。
勉強する出来事が大切です。
これは不自然です。
この場合は、ひらがなの「こと」が合います。
「用事」「事柄」「問題」に近い意味か
次の意味に近い場合は、「事」を検討できます。
- 出来事
- 事件
- 用件
- 事情
- 問題
- 事柄
たとえば、次の文です。
その事について、詳しく聞かせてください。
事の経緯を説明します。
余計な事を言わないほうがいい。
どれも、ある具体的な内容や問題を指しています。
「〜すること」の形ならひらがなを優先する
迷ったとき、もっとも実用的なのはこの判断です。
動詞+こと の形なら、基本はひらがなです。
読むこと
書くこと
話すこと
伝えること
続けること
やめること
ブログ記事、メール、ビジネス文書、レポートでも、この形はひらがなにすると読みやすくなります。
ビジネス文書では「こと」と「事」のどちらがよいか
ビジネス文書では、読みやすさと意味の明確さ を優先します。
結論としては、次のように使い分けると自然です。
| 場面 | おすすめ表記 | 例 |
|---|---|---|
| 行動・内容を表す | こと | ご確認いただくことは可能でしょうか |
| ルール・条件を表す | こと | 期限内に提出すること |
| 用件・問題を表す | 事 | 重要な事を共有いたします |
| 熟語として使う | 事 | 用事、返事、仕事、食事 |
メールでは「こと」を多めにするとやわらかい
メールや案内文では、ひらがなの「こと」を使うと、文章がやわらかく読みやすくなります。
ご確認いただくことは可能でしょうか。
事前にお知らせすることがございます。
ご不明なことがありましたら、お問い合わせください。
「ご不明な事」と書いても間違いではありませんが、「ご不明なこと」のほうが一般向けの文章では自然です。
契約書・規則文では「こと」が多く使われる
ルールや条件を示す文では、「こと」がよく使われます。
申請書を提出すること。
期限を守ること。
無断で使用しないこと。
この場合の「こと」は、命令や条件を示す文末表現の一部です。
「提出する事」と書くより、「提出すること」のほうが読みやすく、文書としても整います。
ひらがなにしたほうが読みやすい理由
漢字が多い文章は、硬く見えたり、読みにくくなったりすることがあります。
たとえば、次の文を比べてみましょう。
| 表記 | 文 |
|---|---|
| 漢字が多い文 | 大切な事は、無理をしない事です。 |
| 読みやすい文 | 大切なことは、無理をしないことです。 |
どちらも意味は通じます。
しかし、後者のほうが自然で、文章全体がすっきり見えます。
特にブログ記事では、読者がスマホで読むことも多いため、形式的な「こと」はひらがなにする と読みやすくなります。
「こと」を全部ひらがなにしてもよいのか
迷ったら、基本的には「こと」とひらがなにして問題ありません。
ただし、すべてをひらがなにすると、具体的な意味が弱くなる場合があります。
具体的な出来事は「事」にしたほうが伝わる
次の文では、「事」のほうが意味が引き締まります。
事の真相を知りたい。
事が大きくなる前に対応する。
事ここに至っては、方針を変えるしかない。
これをすべて「こと」にすると、少しやわらかくなりすぎたり、意味の焦点がぼやけたりします。
一般向け文章では「こと」中心で十分
一方、ブログ記事・メール・説明文では、「こと」を中心に使うと読みやすくなります。
知っておきたいこと
注意したいこと
やってはいけないこと
大切なこと
覚えておくこと
これらは検索でもよく使われる表現です。
読者にとっても見慣れているため、無理に「事」と書く必要はありません。
よくある間違いと自然な直し方
ここでは、迷いやすい表記を自然な形に直してみます。
| 迷いやすい表記 | 自然な表記 | 理由 |
|---|---|---|
| 確認する事があります | 確認することがあります | 動詞を受ける形式的な「こと」 |
| 話した事がある | 話したことがある | 経験を表す「〜したことがある」 |
| 大切な事は続ける事です | 大切なことは続けることです | 内容を受ける「こと」 |
| 事の意味を考える | 事の意味を考える | 具体的な「事柄」を指す |
| 余計なことを言った | 余計なことを言った | 一般的な内容なのでひらがなが自然 |
| 余計な事に巻き込まれた | 余計な事に巻き込まれた | 具体的な問題・トラブルの印象 |
ポイントは、機械的にどちらかに統一しないこと です。
文章の中で何を指しているのかを見て判断しましょう。
「こと」と「事」の使い分け早見表
最後に、判断しやすいように一覧で整理します。
| 表現 | おすすめ表記 | 理由 |
|---|---|---|
| すること | こと | 動作を名詞化している |
| したことがある | こと | 経験を表している |
| ということ | こと | 前の内容を受けている |
| ことができる | こと | 定型表現 |
| ことになる | こと | 定型表現 |
| ことにする | こと | 定型表現 |
| 大切なこと | こと | 内容・考え方を広く指す |
| 出来事 | 事 | 熟語 |
| 用事 | 事 | 熟語 |
| 事の真相 | 事 | 具体的な出来事・事情 |
| 事が大きくなる | 事 | 問題・事件としての意味 |
| 考え事 | 事 | 熟語・名詞 |
「こと」と「事」の使い分けまとめ
「こと」と「事」で迷ったときは、次のように考えると簡単です。
- 動詞や文を受けるなら「こと」
- 「〜すること」「〜したこと」「〜ということ」はひらがな
- 出来事・用事・事柄・問題を表すなら「事」
- 「用事」「仕事」「食事」「返事」などの熟語は漢字
- ブログやメールでは、ひらがなの「こと」を多めにすると読みやすい
迷った場合は、まず ひらがなの「こと」 を候補にしましょう。
そのうえで、「出来事」「用事」「事柄」「問題」に言い換えられる場合だけ、漢字の「事」を使うと自然です。
