「すべからく」は、「当然」「ぜひとも」という意味の言葉です。
よく「すべて」「皆」という意味で使われることがありますが、本来は違います。
たとえば、
学生はすべからく勉学に励むべきだ。
という文は、
「学生は当然、勉学に励むべきだ」という意味です。
「学生はすべて勉強している」という意味ではありません。
すべからくの意味は「当然」「ぜひとも」
「すべからく」は、漢字で書くと「須く」と表します。
意味は、主に次のとおりです。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| すべからく | 当然、ぜひとも |
| すべて | 全部、皆、残らず |
| おしなべて | 全体的に、だいたい一様に |
つまり、「すべからく」は数や範囲を表す言葉ではありません。
「全部」「全員」「すべてのもの」を表したいときは、すべて・皆・全員・おしなべてなどを使います。
すべからくは「すべて」と同じ意味ではない
「すべからく」が誤解されやすい理由は、音が「すべて」と似ているからです。
特に、次のような文では一見意味が通ってしまうため、間違いに気づきにくくなります。
誤用されやすい例
商品はすべからく高品質です。
この文は、「商品はすべて高品質です」と言いたいのだと考えられます。
しかし、「すべからく」は「すべて」という意味ではないため、自然な表現にするなら次のように直します。
商品はすべて高品質です。
商品はどれも高品質です。
商品はおしなべて高品質です。
このように、全体を表したいなら「すべからく」ではなく「すべて」を使うのが正解です。
すべからくの正しい使い方
「すべからく」は、多くの場合、後ろに「べき」「べし」「ねばならない」などを伴って使います。
基本の形は次のとおりです。
すべからく〜べきだ
すべからく〜すべし
すべからく〜ねばならない
意味としては、
「当然〜すべきだ」「ぜひとも〜しなければならない」
という強い必要性を表します。
正しい例文
学生はすべからく学問を本分とすべきだ。
意味:学生は当然、学問を本分とするべきだ。
指導者はすべからく責任ある言動を心がけるべきだ。
意味:指導者は当然、責任ある言動を心がけるべきだ。
社会人はすべからく約束を守るべし。
意味:社会人はぜひとも、約束を守るべきだ。
すべからくの誤用例と正しい言い換え
「すべからく」を「すべて」の意味で使うと、誤用になりやすいです。
次の表で確認してみましょう。
| 誤用しやすい文 | 何が問題か | 自然な言い換え |
|---|---|---|
| 出席者はすべからく帰宅した | 「全員」の意味で使っている | 出席者は全員帰宅した |
| 彼の作品はすべからく美しい | 「どれも」の意味で使っている | 彼の作品はどれも美しい |
| 参加者はすべからく初心者だった | 「皆」の意味で使っている | 参加者は皆初心者だった |
| 商品はすべからく売り切れた | 「すべて」の意味で使っている | 商品はすべて売り切れた |
ポイントは、文の意味を「当然」に置き換えてみることです。
たとえば、
出席者は当然帰宅した
とすると、少し不自然です。
この場合は「すべからく」ではなく、全員・皆・すべてを使うほうが適切です。
すべからくを使うときの判断基準
「すべからく」を使うべきか迷ったら、次のように考えるとわかりやすいです。
「当然〜すべき」と言い換えられるなら使える
次の文は自然です。
学ぶ者はすべからく基礎を大切にすべきだ。
これは、
学ぶ者は当然、基礎を大切にすべきだ。
と言い換えられます。
そのため、「すべからく」を使っても問題ありません。
「すべて」「全部」と言い換えたいなら使わない
次の文は不自然です。
データはすべからく削除された。
この文で言いたいのが「データは全部削除された」という意味なら、次のように書くべきです。
データはすべて削除された。
データは全部削除された。
データは残らず削除された。
「すべからく」は義務や当然性を表す言葉であり、範囲を表す言葉ではありません。
すべからくの言い換え表現
「すべからく」はやや古風で硬い表現です。
日常会話や一般向けの文章では、別の言葉に言い換えたほうが伝わりやすい場合があります。
| 伝えたい意味 | 言い換え表現 | 例文 |
|---|---|---|
| 当然〜すべき | 当然 | 学生は当然、勉強に励むべきだ |
| 必ず〜すべき | 必ず | 担当者は必ず期限を守るべきだ |
| ぜひ〜すべき | ぜひとも | 若いうちにぜひとも挑戦すべきだ |
| 全員が〜すべき | 全員が | 社員全員が規則を守るべきだ |
| すべて | すべて、全部 | 商品はすべて売り切れた |
特に読者にわかりやすく伝えたい文章では、無理に「すべからく」を使う必要はありません。
すべからくをビジネスで使うときの注意点
ビジネス文書で「すべからく」を使うと、文章に重みが出ます。
ただし、誤解される可能性もあるため、使う場面は選びましょう。
使ってもよい場面
「当然そうすべきだ」と強く伝えたい場合には使えます。
管理職はすべからく部下の安全に配慮すべきである。
組織の一員はすべからく情報管理の重要性を理解すべきである。
このように、規範・責任・義務を述べる文では比較的なじみます。
避けたほうがよい場面
一方で、次のような場面では避けたほうが無難です。
- 相手にやさしく伝えたいとき
- 読者層が広い文章を書くとき
- 「すべて」と誤解されると困るとき
- カジュアルな会話やメールを書くとき
たとえば、社内向けの案内なら、
関係者はすべからく資料を確認すべきです。
よりも、
関係者は必ず資料を確認してください。
のほうがわかりやすく、誤解も少なくなります。
すべからくと似た言葉の違い
「すべからく」と混同しやすい言葉に、「すべて」「おしなべて」「あまねく」があります。
すべてとの違い
「すべて」は、物事の全部を表します。
書類はすべて提出しました。
この場合、「全部提出した」という意味です。
一方で、「すべからく」は「当然〜すべき」という意味です。
学ぶ者はすべからく努力すべきだ。
この場合、「学ぶ者は当然努力するべきだ」という意味です。
おしなべてとの違い
「おしなべて」は、「全体的に」「だいたい一様に」という意味です。
今年の新入社員はおしなべて意欲が高い。
これは、「新入社員全体として意欲が高い傾向がある」という意味です。
「すべからく」とは意味が違います。
あまねくとの違い
「あまねく」は、「広く行き渡って」「すみずみまで」という意味です。
その知らせは全国にあまねく広まった。
「あまねく」も範囲の広がりを表す言葉なので、「当然」という意味の「すべからく」とは異なります。
すべからくの覚え方
「すべからく」は、次のように覚えると間違いにくくなります。
すべからく = 当然〜すべき
すべからく ≠ すべて
特に大切なのは、後ろに「べき」「べし」が来ることが多いという点です。
「すべからく」を見たら、頭の中で次のように補ってみてください。
すべからく〜すべきだ
すべからく〜しなければならない
この形で意味が自然に通るなら、正しい使い方である可能性が高いです。
すべからくの意味に関するよくある質問
すべからくは「すべて」という意味ですか?
いいえ。
「すべからく」は「すべて」という意味ではありません。
正しくは、「当然」「ぜひとも」という意味です。
「すべて」と言いたい場合は、そのまま「すべて」「全部」「皆」「全員」などを使いましょう。
すべからくは誤用されやすい言葉ですか?
はい。
「すべからく」は「すべて」と音が似ているため、誤用されやすい言葉です。
実際に、「すべて、皆」という意味だと思っている人も少なくありません。
そのため、正しい意味を知っていても、読者に誤解されそうな場面では言い換えたほうが安全です。
すべからくは日常会話で使えますか?
使えないわけではありませんが、日常会話ではやや硬く、古風に聞こえます。
普段の会話では、
当然〜すべき
必ず〜しなければならない
ぜひ〜したほうがいい
のように言い換えるほうが自然です。
すべからくの後ろには必ず「べき」が必要ですか?
必ずではありませんが、一般的には「べき」「べし」「ねばならない」などと一緒に使われることが多いです。
「すべからく」は、何かを当然行うべきだという意味を表すため、後ろに義務や必要性を示す表現が来ると自然です。
まとめ
「すべからく」は、「当然」「ぜひとも」という意味の言葉です。
「すべて」「皆」「全部」という意味ではありません。
正しく使うなら、
すべからく〜べきだ
すべからく〜すべし
すべからく〜ねばならない
という形を意識しましょう。
一方で、現代の文章ではやや硬く、誤解もされやすい言葉です。
読者にわかりやすく伝えたい場合は、「当然」「必ず」「ぜひとも」「全員が〜すべき」などに言い換えると、より自然で伝わりやすくなります。
