「踏襲」は、とうしゅうと読みます。
ビジネス文書やニュースでよく見かける言葉ですが、「ふしゅう」と読み間違えやすい漢字でもあります。
意味は、簡単にいうと前のやり方や方針を受け継いで、そのまま続けることです。
たとえば、
「昨年の方針を踏襲する」
「前任者のやり方を踏襲する」
のように使います。
この記事では、「踏襲」の読み方・意味・使い方・例文・類語との違いを、初心者にもわかりやすく解説します。
踏襲の読み方は「とうしゅう」
「踏襲」の正しい読み方は、とうしゅうです。
| 漢字 | 読み方 |
|---|---|
| 踏襲 | とうしゅう |
「踏」は「踏む」で「ふ」と読む印象が強いため、「ふしゅう」と読みたくなるかもしれません。
しかし、「踏襲」の場合は「踏」をとうと読みます。
「ふしゅう」は間違い
「踏襲」を「ふしゅう」と読むのは、一般的には誤読です。
間違えやすい理由は、次の2つです。
- 「踏む」を「ふむ」と読む
- 「襲う」を「おそう」と読む
そのため、漢字だけを見ると「ふしゅう」「ふんしゅう」のように読んでしまうことがあります。
ただし、熟語としての読み方はとうしゅうです。
「踏」の読み方から覚える
「踏」は、熟語では「とう」と読むことがあります。
たとえば、次のような言葉があります。
| 言葉 | 読み方 |
|---|---|
| 踏襲 | とうしゅう |
| 踏破 | とうは |
| 高踏的 | こうとうてき |
| 雑踏 | ざっとう |
一方で、「踏む」「足踏み」のように、訓読みでは「ふ」と読みます。
つまり、熟語では「とう」、動詞では「ふむ」と読むことが多いと覚えると理解しやすいです。
踏襲の意味をやさしくいうと「前のやり方を受け継ぐこと」
「踏襲」とは、前の人のやり方・方針・形式などを、そのまま受け継ぐことです。
もう少しやさしく言うと、
これまでの方法を変えずに、同じように続けること
です。
辞書的な意味
「踏襲」には、次のような意味があります。
- 前人のやり方をそのまま受け継ぐこと
- もとの方法や方針を引き継ぐこと
- 以前からの形式を変えずに続けること
ポイントは、単に「受け継ぐ」だけではなく、前のやり方を大きく変えずに続けるというニュアンスがあることです。
「引き継ぐ」との違い
「踏襲」と「引き継ぐ」は似ていますが、少し違います。
| 言葉 | 意味の中心 | 例 |
|---|---|---|
| 踏襲 | 前のやり方をそのまま続ける | 前年度の方針を踏襲する |
| 引き継ぐ | 仕事・役割・情報などを受け渡す | 担当業務を引き継ぐ |
「引き継ぐ」は、担当や情報を受け取る意味で広く使えます。
一方、「踏襲」は、方法・方針・形式・考え方などを同じように続けるときに使います。
踏襲の使い方と例文
「踏襲」は、やや硬い表現です。
日常会話よりも、次のような場面でよく使われます。
- ビジネス文書
- 会議
- 報告書
- ニュース
- 行政や企業の方針説明
- 企画書・提案書
基本の形は、「〇〇を踏襲する」です。
ビジネスでよく使う例文
ビジネスでは、前年度の方針や前任者の方法を続けるときに使います。
方針を踏襲する
例文:
- 今年度も、昨年度の営業方針を踏襲します。
- 基本方針は前回の計画を踏襲し、細部のみ修正します。
- 現行の運用ルールを踏襲したうえで、新しい管理方法を検討します。
「方針を踏襲する」は、大きな方向性は変えないという意味で使えます。
前例を踏襲する
例文:
- 今回の式典は、過去の前例を踏襲して進めます。
- 前例を踏襲するだけでなく、改善できる点も見直しましょう。
- 社内の慣例を踏襲し、同じ形式で資料を作成しました。
「前例を踏襲する」は、過去と同じやり方を採用するという意味です。
ただし、「前例踏襲ばかり」と言うと、やや否定的な印象になることがあります。
デザインや形式を踏襲する
例文:
- 新モデルは、従来製品のデザインを踏襲しています。
- この資料は、前回のフォーマットを踏襲して作成しました。
- ブランドイメージを保つため、旧ロゴの雰囲気を踏襲しました。
この場合は、形・見た目・構成などを受け継ぐ意味になります。
日常やニュースでの使い方
「踏襲」は日常会話では少し硬く聞こえますが、ニュースや解説記事ではよく使われます。
例文:
- 新監督は、前任者の戦術を踏襲した。
- 新制度は、従来の仕組みを一部踏襲している。
- この作品は、シリーズ前作の世界観を踏襲している。
- 政府は、これまでの基本姿勢を踏襲する方針を示した。
ニュースでは、政策・制度・方針などを説明するときに使われやすい言葉です。
踏襲を使うときの注意点
「踏襲」は便利な言葉ですが、使い方によって印象が変わります。
特にビジネスでは、何を、どの程度そのまま続けるのかを明確にすることが大切です。
よい意味にも悪い意味にもなる
「踏襲」は、よい意味でも悪い意味でも使われます。
よい意味では、次のような印象になります。
- 実績のある方法を続ける
- 安定した方針を維持する
- 伝統やノウハウを大切にする
一方で、悪い意味では次のように受け取られることがあります。
- 古いやり方にこだわっている
- 改善する気がない
- 前例に頼りすぎている
たとえば、
「前例を踏襲して進めます」
だけだと、場合によっては「新しい工夫がない」と思われることもあります。
そのため、前向きに伝えたい場合は、
「基本方針は踏襲しつつ、改善点を加えます」
のように書くと、柔軟な印象になります。
何を踏襲するのか具体的に書く
「踏襲します」だけでは、何をそのまま続けるのかがあいまいです。
悪い例:
- 前回を踏襲します。
- これまで通り踏襲します。
これでは、読み手が判断に迷います。
よい例:
- 前回の資料構成を踏襲します。
- 昨年度の営業方針を踏襲します。
- 既存のデザインコンセプトを踏襲します。
「方針」「手順」「形式」「構成」「デザイン」など、対象を具体的に書くと伝わりやすくなります。
カジュアルな会話では言い換えたほうが自然
「踏襲」は硬い言葉なので、日常会話では少し堅苦しく感じられることがあります。
たとえば、友人との会話で、
「前のやり方を踏襲しよう」
と言うよりも、
「前と同じやり方でいこう」
と言ったほうが自然です。
場面に応じて、次のように言い換えるとよいでしょう。
| 硬い表現 | やさしい言い換え |
|---|---|
| 方針を踏襲する | 同じ方針で進める |
| 前例を踏襲する | 前と同じやり方にする |
| 形式を踏襲する | 同じ形式にする |
| デザインを踏襲する | 似たデザインを引き継ぐ |
踏襲の類語・言い換えとの違い
「踏襲」には、似た意味の言葉がいくつかあります。
ただし、それぞれニュアンスが少し違います。
| 類語 | 意味 | 踏襲との違い |
|---|---|---|
| 継承 | 伝統・技術・精神などを受け継ぐ | 価値や考え方を受け継ぐ印象が強い |
| 承継 | 権利・義務・地位などを受け継ぐ | 法律・制度的な文脈で使われやすい |
| 引き継ぐ | 仕事・役割・情報を受け渡す | 日常的で幅広く使える |
| 倣う | 手本にしてまねる | 「同じようにする」意味が強い |
| 準拠する | 規則・基準に従う | ルールに合わせる意味が強い |
| 継続する | そのまま続ける | 受け継ぐ相手や前例の意味は弱い |
「継承」と「踏襲」の違い
「継承」は、伝統・文化・技術・理念などを受け継ぐときによく使います。
例文:
- 伝統技術を継承する
- 創業者の理念を継承する
一方、「踏襲」は、方法・方針・形式などをそのまま続けるときに使います。
例文:
- 前年度の方針を踏襲する
- 従来の形式を踏襲する
簡単に言うと、
継承:価値や精神を受け継ぐ
踏襲:やり方や形式を受け継ぐ
という違いがあります。
「踏襲」と「倣う」の違い
「倣う」は、手本にしてまねることです。
例文:
- 先輩に倣って作業する
- 過去の成功例に倣う
「踏襲」は、単にまねるだけでなく、それまでのやり方を正式に引き続き採用するようなニュアンスがあります。
そのため、ビジネス文書では「倣う」よりも「踏襲」のほうが硬く、公式な印象になります。
踏襲の対義語
「踏襲」の反対に近い言葉には、次のようなものがあります。
| 対義語 | 意味 |
|---|---|
| 刷新 | 古いものを改めて新しくすること |
| 改変 | 内容を変えること |
| 変更 | これまでと違う形にすること |
| 革新 | 新しい方法や考え方に大きく変えること |
| 独自化 | 他と違う自分たちの形にすること |
例文:
- 従来の方針を踏襲せず、新しい制度に刷新した。
- 既存のデザインを踏襲せず、独自の方向性を打ち出した。
- 前例踏襲ではなく、現状に合わせて運用を変更した。
「踏襲」は「続ける」方向の言葉です。
反対に、「刷新」「革新」は変える・新しくする方向の言葉です。
踏襲の覚え方
「踏襲」は、漢字の意味から考えると覚えやすくなります。
- 踏:足で踏む、たどる
- 襲:受け継ぐ、重ねる
つまり、「踏襲」はイメージとして、
前の人の足跡を踏みながら、同じ道を進むこと
です。
このイメージで覚えると、「前のやり方を受け継ぐ」という意味が自然に理解できます。
読み方は「踏破」とセットで覚える
「踏襲」の読み方を忘れやすい人は、「踏破」とセットで覚えるのがおすすめです。
| 言葉 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 踏襲 | とうしゅう | 前のやり方を受け継ぐ |
| 踏破 | とうは | 困難な道のりを最後まで進む |
どちらも「踏」をとうと読みます。
「踏襲=とうしゅう」と音で覚えるだけでなく、「踏破=とうは」と一緒に覚えると、読み間違いを防ぎやすくなります。
踏襲のよくある質問
「踏襲」はビジネスで使ってもよい言葉?
はい、ビジネスで使って問題ありません。
むしろ、方針・手順・形式などを引き継ぐ場面ではよく使われます。
ただし、相手にわかりやすく伝えたい場合は、
- 昨年度の方針を踏襲します
- 前回の資料構成を踏襲します
- 既存の運用ルールを踏襲します
のように、何を踏襲するのかを具体的に書きましょう。
「前例踏襲」は悪い意味?
必ずしも悪い意味ではありません。
「前例を参考にして、安定したやり方を続ける」という意味では、よい意味で使えます。
ただし、
「前例踏襲ばかりで改善がない」
のように使うと、古いやり方にこだわっているという批判的な意味になります。
文脈によって、よい意味にも悪い意味にもなる言葉です。
「踏襲する」は目上の人に使える?
使えます。
ただし、目上の人の方針について使う場合は、少し表現を整えると丁寧です。
例文:
- 〇〇部長の方針を踏襲し、引き続き取り組んでまいります。
- 前任者の運用方法を踏襲しつつ、必要に応じて改善いたします。
「ただ真似します」という印象を避けたい場合は、「踏襲しつつ、改善する」と書くと自然です。
「踏襲」と「コピー」は同じ意味?
同じではありません。
「コピー」は、内容をそのまま写すことです。
一方、「踏襲」は、方針・形式・考え方などを受け継いで続けることです。
たとえば、前回の資料を一字一句同じにするなら「コピー」に近いですが、前回の構成や流れを参考にして作るなら「踏襲」が合います。
まとめ
「踏襲」は、とうしゅうと読む言葉です。
「ふしゅう」と読みたくなりますが、正しい読み方は「とうしゅう」です。
意味は、前のやり方・方針・形式などを受け継いで、そのまま続けることです。
特にビジネスでは、
- 昨年度の方針を踏襲する
- 前任者のやり方を踏襲する
- 従来の形式を踏襲する
- 既存のデザインを踏襲する
のように使います。
ただし、「踏襲」はよい意味にも悪い意味にもなります。
前向きに伝えたいときは、
「基本方針は踏襲しつつ、改善点を加える」
のように書くと、ただ前例に従うだけではなく、工夫する姿勢も伝わります。
