「申します」「申し上げます」「言います」は、どれも“言う”に関係する表現ですが、同じ場面でそのまま置き換えられるわけではありません。
結論から言うと、使い分けの基本は次の通りです。
| 表現 | 基本の意味・性質 | よく使う場面 | 受ける印象 |
|---|---|---|---|
| 申します | 自分側のことを改まって丁寧に述べる | 名乗り、自己紹介、説明 | 丁寧・自然 |
| 申し上げます | 相手に向けて、よりへりくだって述べる | 報告、お礼、お詫び、お願い | かなり丁寧・改まっている |
| 言います | 一般的な丁寧表現 | 日常会話、やや軽めのビジネス会話 | 丁寧だがやわらかい |
つまり、名乗るなら「申します」、相手に敬意を強く示して伝えるなら「申し上げます」、ふだんの丁寧な会話なら「言います」と考えると、かなり使い分けやすくなります。
この記事では、それぞれの違いをわかりやすく整理しながら、ビジネスで迷いやすい例文までまとめて解説します。
申します・申し上げます・言いますの違いを一言で整理
まずは、最初に迷わないための覚え方を押さえておきましょう。
「申します」は、自分のことを丁寧に述べる言い方です。
そのため、自己紹介や名乗りで非常によく使われます。
「申し上げます」は、相手に向けて、より強い敬意を込めて述べる言い方です。
報告・感謝・謝罪・お願いなど、相手に届ける内容と相性がいい表現です。
「言います」は、“言う”の丁寧な基本形です。
失礼ではありませんが、改まった場面では「申します」「申し上げます」ほどのかしこまった印象は出ません。
迷ったときは、次の3つで判断すると失敗しにくくなります。
- 自分の名前や立場を名乗る場面か
- 相手に向けて、敬意を強く出したい場面か
- そこまで改まらなくてもよい場面か
この3点を見るだけでも、選ぶ言葉はかなりはっきりします。
申しますの意味と使い方
申しますは名乗りや自己紹介で使いやすい表現
「申します」は、自分側のことを丁寧に述べるときに使いやすい表現です。
特に定番なのが、次のような言い方です。
はじめまして、山田と申します。
株式会社○○の田中と申します。
先ほどお電話いたしました佐藤と申します。
このように、「申します」は名乗る場面で非常に自然です。
ビジネスメールの書き出しや、電話の第一声でもよく使われます。
「言います」でも文法的には通じますが、
私は山田と言います。
だと、やや説明的で、ビジネスでは少しくだけた印象になりやすいです。
初対面や社外相手なら、「申します」のほうが無難です。
申しますは自分の説明にも使える
「申します」は名乗りだけでなく、自分がすでに話した内容を丁寧に振り返るときにも使えます。
先ほど申しました通りです。
以前申しました件についてご連絡いたします。
私から申しますと、その案に賛成です。
この使い方は、聞き手に対して丁寧に述べる感覚に近いものです。
そのため、会議・電話・メールなどでも広く使えます。
ただし、内容が謝罪・感謝・正式な報告のように重い場合は、「申し上げます」のほうがしっくりくることがあります。
申しますの例文
ここで、すぐ使える形を見ておきましょう。
自己紹介で使う例
はじめまして、営業部の高橋と申します。
このたび担当になりました中村と申します。
電話で使う例
お世話になっております。○○株式会社の木村と申します。
先ほどお電話いたしました者です。山本と申します。
会議で使う例
先ほど申しました点を、改めて確認いたします。
私が申したかったのは、費用よりも納期を優先すべきという点です。
申し上げますの意味と使い方
申し上げますは相手に敬意を強く示す表現
「申し上げます」は、「申します」よりさらに改まりが強い表現です。
よく使われるのは、相手に向けて何かを正式に伝える場面です。
たとえば、次のような内容です。
- ご報告
- ご案内
- お礼
- お詫び
- お願い
このあたりは、「言います」よりも「申し上げます」のほうが、丁寧さ・格式・礼儀が伝わりやすくなります。
申し上げますが自然な場面
「申し上げます」が自然なのは、次のような表現です。
ご報告申し上げます。
心より感謝申し上げます。
深くお詫び申し上げます。
ご案内申し上げます。
お願い申し上げます。
これらに共通しているのは、相手に向けて届けるべき内容だということです。
そのため、「申し上げます」は単に丁寧なだけでなく、相手を立てながら伝える感じが強くなります。
「私は田中と申し上げます」はなぜ不自然なのか
ここは、よくある疑問です。
自己紹介で
私は田中と申し上げます。
という形を見かけることがありますが、一般には不自然、または使わないほうがよい形と考えられます。
自己紹介では、相手に何かを正式に申し述べるというより、自分の名前を名乗るのが中心です。
そのため、この場面では「申します」が自然です。
はじめまして、田中と申します。
こちらのほうが、すっきりしていて実際の使用にも合っています。
申し上げますの例文
お礼で使う例
このたびはご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
お忙しい中ご対応いただき、厚く御礼申し上げます。
お詫びで使う例
このたびはご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。
ご連絡が遅くなりましたことを、謹んでお詫び申し上げます。
報告・案内で使う例
下記の通りご報告申し上げます。
開催日程について、次の通りご案内申し上げます。
お願いで使う例
何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
言いますの意味と使い方
言いますは丁寧だが、改まりすぎない表現
「言います」は、“言う”をです・ます調にした基本的な丁寧表現です。
そのため、失礼な言い方ではありません。
ただし、「申します」「申し上げます」と比べると、敬意の出し方は控えめです。
たとえば、次のような場面では自然です。
あとで詳しく言います。
結論から言います。
率直に言いますと、その案には反対です。
このように、「言います」は一般的で使いやすい一方、
社外文書・謝罪文・正式なお礼などでは少し軽く見えることがあります。
ビジネスで言いますを使ってもよいのか
結論として、使っても問題ない場面は多いです。
たとえば、社内会議や通常の説明であれば、
結論から言います。
まず私の考えを言います。
でも意味は通じます。
ただ、より改まった印象にしたいなら、
結論から申します。
まず私の考えを申し上げます。
のほうが自然になることがあります。
つまり、「言います」が間違いなのではなく、
場面に対して丁寧さが足りるかどうかで選ぶのが大切です。
言いますの例文
その件については、あとで詳しく言います。
正直に言いますと、その進め方には不安があります。
わかりやすく言いますね。
結論から言いますと、今月中の対応は可能です。
日常会話や、少しかしこまった程度の説明なら、十分自然です。
申します・申し上げます・言いますの使い分けのコツ
名乗るなら「申します」
自己紹介・電話・メールの書き出しでは、まずこれを覚えておけば安心です。
○○と申します。
営業担当の○○と申します。
先ほどご連絡いたしました○○と申します。
名乗る場面で「申し上げます」を使う必要は、基本的にありません。
報告・感謝・謝罪・お願いなら「申し上げます」
相手にきちんと敬意を示しながら伝えたい内容には、「申し上げます」が向いています。
ご報告申し上げます。
感謝申し上げます。
お詫び申し上げます。
お願い申し上げます。
この形は、文章でも会話でもフォーマル感を出しやすいのが強みです。
日常的な説明なら「言います」
そこまで堅くしたくない場面では、「言います」が自然です。
先に結論を言います。
正直に言います。
簡単に言います。
社内のやり取りや日常会話では、このくらいの丁寧さがちょうどよいことも多いです。
迷ったら「誰に向けて」「どれだけ改まるか」で決める
最後に、最も実用的な判断基準をまとめます。
自分を名乗る
→ 申します
相手に向けて正式に伝える
→ 申し上げます
一般的に丁寧に話す
→ 言います
この3本立てで考えると、ほとんどの場面に対応できます。
先ほど申しましたと先ほど申し上げましたの違い
この2つは、どちらも使われるため迷いやすい表現です。
先ほど申しました通りです。
先ほど申し上げました通りです。
どちらも成り立ちますが、違いは改まりの強さです。
「先ほど申しました通り」は、丁寧で自然な表現です。
一方で「先ほど申し上げました通り」は、より相手への敬意を強く出したい場面で向いています。
たとえば、次のように考えるとわかりやすいです。
社内会議や通常の説明
先ほど申しました通り、来週から運用を開始します。
社外向けの説明や改まった案内
先ほど申し上げました通り、詳細は改めて文書にてご案内いたします。
つまり、どちらか一方だけが正しいのではなく、場面に合った丁寧さを選ぶことが大切です。
ビジネスでよくある間違い
「私は田中と申し上げます」
これは、自己紹介としては不自然です。
正しくは
私は田中と申します。
はじめまして、田中と申します。
自己紹介では、まず「申します」を選びましょう。
相手側の発言に「申し上げます」を使う
「申し上げます」は、自分側がへりくだって述べる言い方です。
そのため、相手やお客様の発言に使うのは不自然です。
不自然な例
お客様がそのように申し上げました。
自然な例
お客様がそのようにおっしゃいました。
ここは、自分側には謙譲語、相手側には尊敬語という基本を思い出すと整理しやすくなります。
改まりが必要なのに「言います」で済ませてしまう
「言います」は便利ですが、すべてに使うと軽く見えることがあります。
たとえば、
心より感謝言います。
深くお詫び言います。
のような形は不自然です。
この場合は、
心より感謝申し上げます。
深くお詫び申し上げます。
としたほうが自然で、読み手にも丁寧さが伝わります。
すぐ使える例文
自己紹介・名乗りの例文
はじめまして、総務部の佐々木と申します。
このたび担当になりました伊藤と申します。
お電話ありがとうございます。○○株式会社の中島と申します。
報告の例文
下記の通りご報告申し上げます。
結果について、取り急ぎご報告申し上げます。
進捗状況を簡単に申し上げますと、現在は最終確認の段階です。
お礼の例文
このたびはご協力いただき、誠にありがとうございました。心より感謝申し上げます。
平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
お詫びの例文
ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
確認不足によりご不便をおかけしましたことを、お詫び申し上げます。
日常的な説明の例文
結論から言いますと、その案には賛成です。
わかりやすく言いますと、費用よりも時間を優先する方針です。
正直に言いますと、現時点では判断が難しいです。
迷ったときのおすすめの選び方
最後に、実際の場面で迷ったときの最短ルールをまとめます。
初対面で名乗る
→ 「申します」
メールや文書でお礼・謝罪・お願いを伝える
→ 「申し上げます」
日常的に説明する
→ 「言います」
そして、ビジネスで失敗しにくい順に並べると、
名乗りは「申します」
重い内容は「申し上げます」
一般説明は「言います」
この順で覚えておくと、かなり実用的です。
まとめ
「申します」「申し上げます」「言います」の違いは、単に丁寧さの強弱だけではありません。
どこに敬意を向けるか、どれだけ改まった場面かによって、自然な表現が変わります。
ポイントをもう一度まとめると、次の通りです。
- 申します:名乗り・自己紹介・自分側の説明に使いやすい
- 申し上げます:報告・感謝・謝罪・お願いなど、相手に敬意を強く示したいときに使う
- 言います:一般的な丁寧表現で、日常会話ややや軽めのビジネス会話に向く
特に迷いやすいのは、自己紹介で「申し上げます」を使ってしまうことです。
自己紹介は「申します」が基本、と覚えておくとブレにくくなります。
一方で、お礼やお詫びなど相手にきちんと届けたい言葉は、「申し上げます」にすると自然です。
使い分けに迷ったら、
「名乗るのか」「相手に正式に伝えるのか」「普通に丁寧に話すだけか」
この3つで考えてみてください。
それだけで、かなり正確に選べるようになります。
