「させていただきます」は、丁寧に見えるぶん、つい多用しやすい表現です。
ただ、何にでも付ければ上品になる言葉ではありません。
使い方が合っていないと、かえって回りくどい・わざとらしい・内容が入ってこないという印象につながることもあります。
先に結論を言うと、判断の軸はシンプルです。
「相手や第三者の許可があるか」
「そのことで自分が恩恵を受けるか」
この2つがある場面なら自然です。
反対に、この2つが薄い場面では、「いたします」「します」「伺います」などに言い換えた方がすっきり伝わります。
この記事では、「させていただきます」の正しい使い方と、ビジネスでそのまま使える言い換えをわかりやすく整理します。
「させていただきます」は使いすぎると不自然?
「させていただきます」は、間違いと決めつけられる表現ではありません。
問題になりやすいのは、必要のない場面まで繰り返してしまうことです。
たとえば、次のような文章は少しくどく見えます。
在庫を確認させていただき、後ほどお電話させていただきます。
この文が読みにくいのは、同じ形が続いているからです。
しかも、在庫確認や折り返しの電話は、通常は相手の許可を受けて行う行為とは言いにくいため、「させていただきます」が重く感じられます。
自然に直すなら、次のようになります。
在庫を確認のうえ、後ほどお電話いたします。
丁寧さは、言葉を長くすれば出るものではありません。
むしろ、必要なところだけ丁寧にする方が、誠実に伝わります。
「させていただきます」の正しい使い方
判断基準は「許可」と「恩恵」
「させていただきます」が自然になりやすいのは、次の2つがそろう場面です。
- 相手や第三者の許可を受けて行う
- そのことで自分が恩恵を受ける
この2条件を意識すると、使うべき場面がかなり見えやすくなります。
「させていただきます」が自然な場面
次のようなケースでは、比較的自然です。
| 場面 | 自然な表現 | 理由 |
|---|---|---|
| 相手の物を使う前 | コピーを取らせていただけますか | 許可が必要だから |
| 休暇を申請する | 明日、休暇を取らせていただきます | 許可・配慮が関わるから |
| 日程変更を伝える | 日程を変更させていただきます | 相手への配慮が必要だから |
| 発表の冒頭 | それでは、発表させていただきます | 場面によって自然に受け取られやすいから |
ただし、ここで大事なのは、いつでも絶対にこの形が最適とは限らないことです。
同じ内容でも、場面によっては「いたします」の方が簡潔で自然です。
「させていただきます」を言い換えた方がよい場面
一方で、次のような表現は言い換えるとぐっと読みやすくなります。
| 少しくどい表現 | 自然な言い換え |
|---|---|
| ご連絡させていただきました | ご連絡いたしました |
| 後ほどお電話させていただきます | 後ほどお電話いたします |
| 資料を送付させていただきます | 資料をお送りします |
| 説明させていただきます | ご説明いたします |
| 確認させていただきます | 確認いたします |
| 感動させていただきました | 感動しました / 感銘を受けました |
| 卒業させていただきました | 卒業しました |
ポイントは、その行為に本当に「許可」が必要かどうかです。
必要ないなら、「させていただきます」を外した方が自然なことが多いです。
「させていただきます」が不自然に見える理由
1文の中で繰り返されるから
同じ文の中に2回、3回と入ると、内容よりも表現の重さが目立ちます。
たとえば、
資料を確認させていただき、修正させていただいたうえで、再送させていただきます。
よりも、
資料を確認し、修正のうえ、再送いたします。
の方が、ずっと伝わりやすいです。
へりくだりすぎて見えるから
丁寧にしようという気持ちは大切です。
ただ、必要以上にへりくだると、不自然な遠慮のように見えることがあります。
特に、日常的な業務連絡で毎回この形を使うと、かえって堅苦しくなります。
用件がぼやけるから
「させていただきます」は、表現として長めです。
多用すると、文章の核である何をするのかがぼやけやすくなります。
ビジネス文では、
丁寧さ + 分かりやすさ
の両方が必要です。
「させていただきます」の言い換え一覧
「させていただきます」は、次のように置き換えると自然です。
基本は「いたします」に置き換える
もっとも使いやすい言い換えは、「いたします」です。
- ご連絡させていただきます → ご連絡いたします
- ご説明させていただきます → ご説明いたします
- ご案内させていただきます → ご案内いたします
迷ったときは、まず「いたします」に直してみると、かなり整います。
短く言い切った方がよい場合は「します」
場面によっては、「します」の方が自然です。
- 本日発送させていただきます → 本日発送します
- こちらで集計させていただきます → こちらで集計します
社内連絡や、ややフラットな文面では、「します」がちょうどよいこともあります。
動詞そのものを変えるともっと自然になる
「させていただきます」を削るだけでなく、動詞ごと入れ替えると、さらに洗練されます。
| 元の表現 | おすすめの言い換え |
|---|---|
| 訪問させていただきます | 伺います |
| 拝見させていただきます | 拝見します |
| 説明させていただきます | ご説明いたします |
| 送付させていただきます | お送りします |
| 確認させていただきます | 確認のうえご連絡いたします |
この考え方を持つだけで、文章がかなり引き締まります。
ビジネスメールで「させていただきます」を減らすコツ
コツ1:1メールに何回も入れない
メール全体を見て、同じ語尾が続いていないかを確認しましょう。
悪い例
本日は資料を送付させていただきます。
ご確認させていただき、不明点があればご連絡させていただきます。
自然な例
本日、資料をお送りします。
ご確認のうえ、ご不明点がございましたらご連絡ください。必要があれば、こちらからもご連絡いたします。
同じ意味でも、後者の方が読みやすく、仕事ができる印象になりやすいです。
コツ2:相手に配慮する部分だけ丁寧にする
文章全体を重くするより、配慮が必要な箇所だけ丁寧にする方が効果的です。
たとえば、
- 恐れ入りますが
- お手数をおかけしますが
- 申し訳ございませんが
このようなクッション言葉を適切に入れると、「させていただきます」を増やさなくても十分丁寧になります。
コツ3:「本当に許可が必要か」を確認する
メール作成時は、次のように自問すると判断しやすいです。
3秒チェック
- この行為は、相手の許可が必要か
- その行為で、自分は恩恵を受けるか
- 「いたします」に変えた方が自然ではないか
3つ目に「はい」と感じたら、たいていは言い換えた方がすっきりします。
「させていただきます」を使うべき場面と避けたい場面
使うべき場面
- 許可を求めるとき
- 休暇、変更、辞退など、相手への配慮が強く必要なとき
- 儀礼的な場面で、へりくだった言い方が自然なとき
避けたい場面
- ただの業務報告
- 自分の通常業務の説明
- 1文の中で何度も使うとき
- 「いたします」で十分伝わるとき
つまり、「特別な配慮が必要な場面だけ使う」と覚えると、失敗しにくくなります。
「させていただきます」に迷ったときの結論
「させていただきます」は、丁寧な便利表現です。
しかし、便利だからこそ、使いどころを選ぶことが大切です。
覚えておきたいのは次の3点です。
- 使ってよい表現だが、万能ではない
- 「許可」と「恩恵」がある場面で自然になりやすい
- 迷ったら「いたします」に言い換えると整いやすい
丁寧な文章は、長い文章ではありません。
必要なところだけ丁寧にし、用件ははっきり伝えることが、いちばん印象のよい書き方です。
「させていただきます」を減らすだけで、メールも会話もぐっと自然になります。
まずは、今日から1文に2回以上使わないことを意識してみてください。
