「伺います」は、ビジネスでも日常でもよく使う言葉です。
ただ、
「行く」の意味なのか、「聞く」の意味なのか、「質問する」の意味なのかが文脈で変わるため、何となく使っていると不自然になりやすい表現でもあります。
結論から言うと、「伺います」は相手を立てながら、自分が行く・聞く・尋ねることを表す言い方です。
意味をひとつずつ分けて考えると、使い分けで迷いにくくなります。
「伺います」の意味を先に結論
「伺います」は、動詞「伺う」に丁寧語の「ます」が付いた形です。
文化庁の「敬語の指針」では、「伺う」は謙譲語Ⅰに分類されています。
謙譲語Ⅰは、自分側から相手側または第三者に向かう行為について、その向かう先の人物を立てて述べる敬語です。
辞書でも「伺う」は、主に 「聞く」「尋ねる」「訪問する」 の謙譲語として説明されています。
まずは、意味の全体像を表で押さえておきましょう。
| 使いたい意味 | 「伺います」が表す内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 行く | 相手のもとへ行く | 明日14時に御社へ伺います。 |
| 訪ねる | 相手のところを訪問する | 後ほど研究室へ伺います。 |
| 聞く | 相手の話を聞く | 詳しい事情を伺いました。 |
| 尋ねる | 相手に質問する | 1点、確認のため伺います。 |
ここで大事なのは、「伺います」は一語で複数の意味を持つという点です。
そのため、前後の文脈がないと意味が伝わりにくいことがあります。メールや会話では、何をするのかが分かるように書くのがコツです。 ([Indeed][1])
「行く」「聞く」「訪ねる」はどう違う?
似ている言葉でも、意味と敬語の方向が違います。
特に混同しやすいのが、「訪ねる」と「尋ねる」です。
「行く・訪ねる」の意味で使うとき
「伺います」は、相手のところへ行く、または相手を訪問するという意味で使えます。
たとえば、
- 明日、御社に伺います
- 13時ごろそちらへ伺ってもよろしいでしょうか
- 後ほど先生の研究室へ伺います
のような使い方です。
辞書では「訪ねる」は、会うためにその人のいる所へ行くこと、ある目的があってその場所へ行くことと説明されています。
つまり、「訪ねる」は中立的な語で、そこに敬語の気持ちを加えたのが「伺います」と考えると分かりやすいです。 ([コトバンク][2])
「聞く」の意味で使うとき
「伺います」には、相手の話を聞くという意味もあります。
たとえば、
- 詳細を伺いました
- 先ほど担当の方から伺っております
- まずはご事情を伺います
のように使います。
この場合は、耳で聞くというより、相手から情報や事情を聞く場面で使われることが多い表現です。
「聞く」をそのまま丁寧にしたいときに便利ですが、何を聞くのかが曖昧だと伝わりにくいので、「ご希望を伺う」「お話を伺う」のように目的語を添えると自然です。 ([コトバンク][3])
「尋ねる」の意味で使うとき
さらに「伺います」には、相手に質問する、確認するという意味もあります。
たとえば、
- 1点、伺ってもよろしいでしょうか
- 納期について伺います
- ご意見を伺いたいです
のような使い方です。
辞書では「尋ねる」は、わからないことを人に聞く、質問する意味を持ちます。
そのため、質問する相手を立てたいときに「伺います」が使われます。 ([コトバンク][4])
「訪ねる」と「尋ねる」を混同しないことが大切
「たずねる」は同じ読みでも、漢字が違うと意味が変わります。
| 表記 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 訪ねる | 行って会う、訪問する | 先生の研究室を訪ねる |
| 尋ねる | 質問する、聞く | 担当者に詳細を尋ねる |
この違いを押さえておくと、「伺います」の意味も整理しやすくなります。
- 訪ねる に近い「伺います」
→ 相手のもとへ行く、訪問する - 尋ねる に近い「伺います」
→ 質問する、確認する - 聞く に近い「伺います」
→ 相手の話を聞く
つまり「伺います」は、
“行く側”の意味にも、“聞く・質問する側”の意味にも使える言葉です。
ここが分かっていないと、文章の意味がぼやけやすくなります。 ([コトバンク][2])
「伺います」が自然に使える例文
ここでは、場面別に自然な言い方をまとめます。
訪問するときの例文
- 明日15時に御社へ伺います。
- ご都合がよろしければ、来週そちらへ伺いたく存じます。
- 後ほど資料を持って伺います。
相手のところへ行くことがはっきりしているため、意味が伝わりやすい使い方です。
話を聞くときの例文
- まずは現在の状況を伺います。
- 先日、担当者様から詳しく伺いました。
- ご希望を伺ったうえでご提案いたします。
「誰から」「何を」聞くのかを明示すると、文が締まります。
質問・確認をするときの例文
- 1点、確認のため伺います。
- 納期について伺ってもよろしいでしょうか。
- 差し支えなければ、ご意見を伺えれば幸いです。
この使い方は、唐突に質問する印象を和らげたいときに特に役立ちます。 ([Indeed][1])
使い方で迷いやすいポイント
「伺います」は便利な言葉ですが、使える場面と使えない場面があります。
相手の行動には使わない
「伺う」は、自分側の行為について使う謙譲語です。
そのため、相手やお客様の行動に使うのは不自然です。
たとえば、
- × 担当者に伺ってください
は不適切です。
文化庁も、こうした場合は「お聞きください」「お尋ねください」のように、相手の行動に合う表現を使うべきだと説明しています。 ([文化庁][5])
「伺います」と「参ります」は同じではない
どちらも丁寧に見えますが、働きは同じではありません。
文化庁では、
- 伺う
→ 向かう先の人物を立てる謙譲語Ⅰ - 参る
→ 話し相手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱ
と整理しています。
使い分けのイメージは次のとおりです。
| 表現 | 向いている場面 | 例 |
|---|---|---|
| 伺います | 訪問先・質問相手を立てたい | 明日、御社へ伺います。 |
| 参ります | 自分の動作を改まって述べたい | ただいま会場へ参ります。 |
特に、相手先への訪問なら「伺います」のほうが意図が明確です。
一方で、単に改まって「行きます」と言いたいだけなら「参ります」も使えます。 ([文化庁][6])
文脈がないと意味が伝わりにくい
「伺います」だけでは、
- 行くのか
- 聞くのか
- 質問するのか
が分かりにくいことがあります。
たとえば、
「後ほど伺います」は訪問の意味に見えやすいですが、
「後ほど詳しく伺います」なら聞く意味に近くなります。
誤解を避けたいときは、
- 後ほど御社へ伺います
- 後ほど詳細を伺います
- 後ほど1点伺います
のように、言葉を少し足すのがおすすめです。 ([Indeed][1])
こんな言い換えをすると伝わりやすい
「伺います」は便利ですが、毎回これだけで済ませると、かえって曖昧になることがあります。
意味をはっきりさせたいときは、次のような言い換えも有効です。
| 伝えたい内容 | 言い換え例 |
|---|---|
| 行く | お伺いする、訪問する、参る |
| 聞く | お話を聞く、承る、拝聴する |
| 質問する | お尋ねする、確認する、質問する |
特にメールでは、丁寧さより分かりやすさが大切です。
相手に負担をかけない文章にしたいなら、「伺います」を使うかどうかよりも、何をするのかが一読で分かるかを意識すると失敗しにくくなります。 ([Domani][7])
まとめ
「伺います」は、丁寧そうに見えるだけの言葉ではありません。
意味と敬語の方向を理解して使うと、文章や会話がぐっと自然になります。
押さえておきたいポイントは、次の4つです。
- 「伺います」は 「行く」「聞く」「尋ねる」 の謙譲表現
- 訪問の意味でも、ヒアリングや質問の意味でも使える
- 「訪ねる」と「尋ねる」は別の語なので混同しない
- 相手の行動には使わず、自分側の行為として使う
迷ったときは、
「私は相手のところへ行くのか」
「私は相手の話を聞くのか」
「私は相手に質問するのか」
を先に考えてみてください。
そこがはっきりすれば、「伺います」を自然に使い分けられるようになります。
