「おります」と「います」は、どちらも「いる」をもとにした表現です。
ただし、ビジネスでは使い分けが大切です。
なんとなく「おります」のほうが丁寧そうだからと多用すると、かえって不自然になることがあります。
特に迷いやすいのが、次のような場面です。
- 自分のことを言うとき
- 自社の上司や同僚のことを社外に伝えるとき
- 取引先やお客様の在席をたずねるとき
この記事では、「おります」と「います」の違いを整理したうえで、ビジネスでそのまま使える例文とともに、わかりやすく解説します。
「おります」と「います」の違いを先に結論
結論から言うと、違いは次のとおりです。
| 表現 | 基本の意味 | 丁寧さ | 主に使う相手・対象 |
|---|---|---|---|
| います | いることを丁寧に言う | 標準的 | 幅広く使える |
| おります | 自分側のことを改まって言う | より改まった印象 | 自分・自社・身内側 |
つまり、「います」は一般的な丁寧表現、「おります」はビジネスで自分側を丁重に述べる表現です。
迷ったときは、まずこの3つで考えると整理しやすくなります。
- 自分側のこと → 「おります」
- 相手側のこと → 「いらっしゃいます」
- 一般的・中立的な説明 → 「います」
「おります」がビジネスでよく使われる理由
ビジネスでは、相手に失礼のないよう、言い方を少し改まらせることがよくあります。
そのとき便利なのが「おります」です。
たとえば、
- 私は本日、終日オフィスにおります
- 担当の者はただいま席を外しております
- 後ほどこちらからご連絡しております
→ これは不自然なので、正しくは「ご連絡いたします」や「ご連絡差し上げます」
このように、「おります」は便利ですが、使う場所を間違えると不自然になります。
大切なのは、“誰のことを言っているか”です。
ビジネスでの基本ルール
自分・自社・身内のことは「おります」
自分自身や、自社の人、自分の身内について述べるときは「おります」が自然です。
例文
- 私は本日、終日社内におります
- 担当の山田は、ただいま外出しております
- 弊社の営業担当が、14時ごろそちらへ参ります
- 私どもは大阪にも拠点を置いております
ここで大事なのは、自社の上司も社外に対しては「自分側」だということです。
たとえば、社外の人に対して
- 部長の田中は、ただいま席を外しております
は自然です。
一方で、
- 部長の田中は、ただいま席を外していらっしゃいます
とすると、自分の会社の人を持ち上げすぎた言い方になりやすいので、通常は避けます。
相手・取引先・お客様には「いらっしゃいます」
相手側の人については、「おります」ではなく尊敬語を使うのが基本です。
例文
- 佐藤様は、ただいま会議室にいらっしゃいます
- ご担当者様は本日、在席していらっしゃいますか
- 社長はもういらっしゃいますか
「相手のことだから丁寧にしたい」と思って
“お客様がおります” と言いたくなることがありますが、これは不自然です。
相手側には、
- お客様がいらっしゃいます
- ご担当者様は社内にいらっしゃいます
のように言うのが自然です。
中立的な内容なら「います」でも問題ない
「います」は失礼な表現ではありません。
もともと丁寧な形なので、幅広く使えます。
たとえば、
- 会場には多くの人がいます
- 担当者は今日は社内にいます
- 私は今、東京にいます
も文法的には問題ありません。
ただし、ビジネスメール・電話・来客対応のような改まった場では、
自分側については「おります」のほうが、より自然に聞こえることが多いです。
社内と社外で変わる使い分け
「おります」と「います」で特に迷いやすいのが、自社の上司をどう表現するかです。
社外の相手に話すとき
社外の人に対しては、自社の社長・部長・上司・同僚は身内側です。
そのため、基本はへりくだって表現します。
例文
- 社長の佐藤は、ただいま外出しております
- 部長の田中は、本日出張しております
- 担当者は本日休みを取っております
社内で上司本人や社内の目上に話すとき
社内で、上司本人や目上の人に敬意を示すなら、尊敬語を使うのが自然です。
例文
- 部長は今、どちらにいらっしゃいますか
- 課長は会議室にいらっしゃいます
- 社長はまもなくこちらへいらっしゃいます
つまり、同じ「部長」でも、
- 社外に向けて自社の部長を説明する → 「おります」
- 社内で部長本人や部長側を立てて言う → 「いらっしゃいます」
という違いがあります。
ここを押さえるだけで、ビジネス敬語はかなり自然になります。
「おります」を使ったビジネス例文
電話対応で使う例
電話では、「おります」が非常によく使われます。
在席を伝える
- 山田はただいま席におります
- 担当者は本日、社内におります
- その者でしたら、ただいまこちらにおります
不在を伝える
- 申し訳ございません。田中はただいま席を外しております
- あいにく、担当者は外出しております
- 本日は休みを取っております
戻り予定を伝える
- 15時ごろには戻っております
- 夕方までには社に戻る予定でございます
- 戻りましたら、こちらからご連絡いたします
メールで使う例
メールでも「おります」は自然です。
よく使う表現
- 平素よりお世話になっております
- 私は営業部の山田と申します
- 現在、内容を確認しております
- 日程を社内で調整しております
- ご不明点がございましたら、お気軽にご連絡ください
ただし、何でも「おります」にすればよいわけではありません。
動作によっては、別の敬語のほうが自然です。
たとえば、
- ご説明しております
より - ご説明いたします
- ご連絡しております
より - ご連絡いたします
のほうが、すっきり自然に読めることがあります。
会話で使う例
- 私は来週も東京におります
- その件は、担当者が詳しく把握しております
- ただいま確認しておりますので、少々お待ちください
- しばらくこちらでお待ちしております
「しております」と「しています」の違い
「おります」と「います」の違いがわかると、
「しております」と「しています」の違いも理解しやすくなります。
- しています
→ 標準的な丁寧表現 - しております
→ より改まった、自分側を丁重に述べる表現
例文
- 私は人事を担当しています
- 私は人事を担当しております
どちらも間違いではありません。
ただし、ビジネス文書や電話では、後者のほうが少し改まった印象になります。
また、
- 現在、内容を確認しております
- 社内で検討しております
- 順次対応しております
のような言い方は、ビジネスではよく使われます。
間違いやすい使い方
ここでは、特につまずきやすい例を整理します。
相手に「おります」を使う
誤:お客様は応接室におります
正:お客様は応接室にいらっしゃいます
相手側の人には、尊敬語を使うのが基本です。
社外の相手に自社の上司を高めて言う
誤:弊社の部長が、ただいまいらっしゃいます
正:弊社の部長が、ただいまおります
社外では、自社の上司も「自分側」です。
何でもかんでも「おります」にする
やや不自然:後ほどご連絡しております
自然:後ほどご連絡いたします
「おります」は便利ですが、万能ではありません。
“その動詞に本当に合うか”を考えると、文章が自然になります。
迷ったときの簡単チェック
敬語に迷ったら、次の順番で考えると判断しやすいです。
- 誰のことを言っているか
- その人は自分側か、相手側か
- 相手側なら尊敬語、自分側なら謙虚な表現になっているか
すぐに判断したいときは、次の形で覚えておくと便利です。
- 私・弊社・担当者 → おります
- お客様・取引先・相手の上司 → いらっしゃいます
- 中立的な説明 → います
まとめ
「おります」と「います」の違いは、意味そのものよりも、敬語としての働きにあります。
- いますは、広く使える丁寧な表現
- おりますは、自分側のことを丁重に述べる表現
- 相手側には「おります」ではなく、いらっしゃいますを使う
- 社外では自社の上司も自分側として扱う
ビジネスで最も大切なのは、
“丁寧そうな言葉を選ぶこと”ではなく、“誰を立てるべきかを見極めること”です。
この基準がわかれば、
- 電話対応
- メール
- 来客応対
- 社内外の会話
でも、自然で失礼のない言い方ができるようになります。
