「ございます」と「あります」は、どちらも「ある」を丁寧に言うときの表現です。
そのため、まず押さえたいのは、意味そのものは大きく変わらないということです。
ただし、同じ内容でも、相手・場面・文全体の雰囲気によって、自然に聞こえる表現は変わります。
特に、「丁寧にしよう」と思って何でも「ございます」にすると、かえって固すぎたり、よそよそしく聞こえたりすることがあります。敬語は一律の決まりだけで選ぶものではなく、相手との関係やその場の空気に合わせて選ぶことが大切です。
「ございます」と「あります」の違いをひとことで言うと
結論から言うと、次のように整理できます。
| 表現 | 基本の意味 | 丁寧さ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| あります | ある | 丁寧 | 日常会話、社内、やや改まりすぎない説明 |
| ございます | ある | より丁寧・改まった言い方 | 接客、社外対応、改まった案内、定型的な表現 |
文化庁の説明では、「です・ます」は相手に対して丁寧さを添える丁寧語であり、「(で)ございます」はそれと同じタイプで、さらに丁寧さの度合いが高い表現とされています。つまり、違いの中心は意味よりも丁寧さの度合いにあります。
「ございます」が自然に聞こえる場面
接客や案内をするとき
お客様対応や受付、電話応対では、「ございます」は自然に使われやすい表現です。
たとえば、次のような言い方です。
- ただいま担当者は席を外しております
- こちらに資料がございます
- ご不明な点はございますか
- 在庫は少量ですがございます
このような場面では、少し改まった言い方のほうが、相手への配慮が伝わりやすくなります。
特に、案内・確認・おわび・定型表現では、「ございます」がなじみやすいです。
社外向けのメールや文書
メールでも、相手が取引先や顧客で、文面を少しきちんと見せたいときは「ございます」が使いやすくなります。
例
- 添付資料に誤りがございました
- 下記の通りご案内申し上げます
- ご確認いただきたい点がございます
このあたりは、内容そのものよりも、文全体を少し整えて見せたいときに向いています。
定型表現として定着している言い方
「ありがとうございます」「おはようございます」のように、「ございます」が自然に定着している表現もあります。
こうした言い回しは、無理に「あります」に置き換えるものではありません。
「あります」が自然に聞こえる場面
日常会話や社内のやり取り
「あります」は、丁寧ではあるものの、必要以上に固くならないのが長所です。
たとえば、次のような言い方は自然です。
- 会議室に空きがあります
- その件は資料に説明があります
- いくつか確認したい点があります
- 明日、少し時間がありますか
社内の会話、同僚とのやり取り、普段の説明では、こちらのほうがすっきり伝わることが少なくありません。
「丁寧=いつも最上級にすればよい」というわけではなく、その場に合った温度感で選ぶのが自然です。
事実を落ち着いて伝えたいとき
「ございます」は丁寧ですが、文によっては少し仰々しく聞こえることがあります。
そのため、淡々と事実を伝えたいときは、「あります」のほうが読みやすく、やわらかく聞こえることがあります。
たとえば、
- 誤りがあります
- 変更があります
- 注意点があります
のような文は、説明文や社内共有ではとても使いやすい形です。
自然に使うための3つのポイント
1. 単語だけでなく、文全体の雰囲気で選ぶ
自然な敬語は、単語単体ではなく、文全体のまとまりで決まります。
たとえば、
- ご確認いただきたい点がございます
- 確認したい点があります
は、どちらも間違いではありません。
ただし、前後の文が「恐れ入ります」「何卒よろしくお願いいたします」のように改まっているなら前者が合いやすく、全体が簡潔な社内連絡なら後者のほうが自然です。
2. 相手を立てたいのか、単に丁寧に言いたいのかを分けて考える
ここは大切なポイントです。
「ございます」は丁寧語なので、相手に対して丁寧に述べる表現です。
一方、相手そのものを高める表現が必要な場合は、尊敬語のほうが自然になることがあります。
たとえば、
- ご不明な点はございますか
- ご予定はおありですか
- 担当者はいらっしゃいますか
のように、内容によって自然な形が変わります。
特に、人の存在や相手の動作に関わるときは、「ございます」よりも「いらっしゃいます」「おありですか」のほうがしっくりくることがあります。
「とにかく丁寧にしたいから全部『ございます』」ではなく、何を丁寧にしているのかを考えるのがコツです。
3. 「ございます」を連発しない
「ございます」は便利ですが、文中に何度も続くと、かえって重く感じられます。
例
- ご確認いただきたい点がございます。ご不明な点がございましたらご連絡ください。なお、添付資料に補足がございます。
間違いではありませんが、少しくどく見えます。
こういうときは、次のように少し崩すと自然です。
- ご確認いただきたい点がございます。不明点がありましたらご連絡ください。なお、添付資料に補足もあります。
文化庁も、敬語は過剰でなく適度に使うことが大切だとしています。
丁寧な語を増やすことより、相手への配慮が伝わるかどうかのほうが重要です。
「ございます」と「あります」の使い分けで迷いやすい表現
「ございますか」と「ありますか」
これは、相手との距離感で選ぶと考えると分かりやすいです。
- ありますか
日常的、やややわらかい、シンプル - ございますか
改まっている、接客向き、文面でも使いやすい
例
- このあたりにコンビニはありますか
- ご質問はございますか
前者を後者に変えても文法上は大きな問題はありませんが、場面によっては丁寧すぎて浮くことがあります。
「〜でございます」と「〜です」
これも同じ考え方です。
- 山田です
- 山田でございます
「でございます」のほうが丁寧ですが、自己紹介やアナウンスでは自然でも、普通の会話では少し固く聞こえることがあります。
受付、電話、案内、改まった自己紹介では「でございます」がなじみやすく、日常の会話では「です」で十分なことが多いです。
「ございます」と「いらっしゃいます」
ここは混同しやすいところです。
- 在庫がございます
- ご不明な点はございますか
は自然です。
一方で、人について言うときは、
- 担当者はいらっしゃいますか
- 先生でいらっしゃいますか
のように、尊敬語のほうが自然になりやすい場面があります。
「ございます」は丁寧に述べる表現、
「いらっしゃいます」は相手を立てる表現、
と考えると整理しやすいです。
例文で見る「自然な言い換え」
| 場面 | より自然な例 |
|---|---|
| 社内で軽く確認する | 明日、少しお時間がありますか |
| 取引先に改まって尋ねる | 明日、お時間はございますか |
| 接客で案内する | こちらにお掛けの資料がございます |
| 社内で説明する | 資料は共有フォルダにあります |
| 受付で名乗る | ○○会社の田中でございます |
| 普段の自己紹介 | 田中です |
| 人の在席確認 | 担当者はいらっしゃいますか |
| 予定の有無を丁寧に尋ねる | 来週、ご都合はおありですか |
この表を見ると分かるように、自然さは「正しい/間違い」だけでは決まりません。
場面に合っているかどうかが重要です。
間違えやすい表現に注意
「ございますでしょうか」
これは丁寧そうに聞こえますが、一般には二重敬語として適切ではないとされます。
無難に言うなら、次の形がおすすめです。
- ご不明な点はございますか
- 在庫はありますか
- ご予定はおありですか
文化庁は、一つの語に同じ種類の敬語を重ねたものを二重敬語とし、一般には適切ではないと説明しています。
「いる」を「ございます」にする
「ございます」は基本的に「ある」に関わる表現です。
そのため、「いる」を言い換えるときに使うのは不自然です。
- 担当者はおります
- 担当者はいらっしゃいますか
のように、「いる」には「おります」「いらっしゃいます」を使い分けます。
「ございます」は便利ですが、存在するものが物事なのか、人なのかで選ぶ表現が変わります。
迷ったときの判断基準
迷ったら、次の順番で考えると選びやすくなります。
- 相手は誰か
社内の人か、社外の人か、お客様か。 - どれくらい改まった場面か
会話か、接客か、正式なメールか。 - 人を立てたいのか、単に丁寧に言いたいのか
人に敬意を向けるなら尊敬語、文全体を丁寧に整えるなら丁寧語。 - 文全体が固くなりすぎていないか
「ございます」が続きすぎていないかを見る。
この4つを意識するだけで、「ございます」と「あります」の違和感はかなり減ります。
まとめ
「ございます」と「あります」の違いは、意味の違いというより、丁寧さと改まり方の違いです。
「ございます」は、接客や社外対応、改まった案内で自然に使いやすい表現です。
一方、「あります」は、丁寧さを保ちながらも、やわらかく自然に伝えやすい表現です。
大事なのは、
「丁寧な言葉を選ぶこと」そのものではなく、相手と場面に合った言い方を選ぶことです。
迷ったときは、まず「あります」で文を作ってみて、少し改めたいと感じたところだけ「ございます」に変えると、自然な文章になりやすいでしょう。
