「丁寧に書こう」と意識すると、かえって文章が長くなり、何を伝えたいのか見えにくくなることがあります。
たとえば、
「ご確認いただけますでしょうか」
「ご対応いただけますと幸甚に存じます」
「確認させていただいた上で、改めてご連絡させていただきます」
こうした表現は失礼ではありません。
ただ、敬語を重ねすぎると、丁寧さより先に読みにくさが目立つことがあります。
伝わる敬語のコツは、へりくだることではなく、相手がすぐ理解できる形に整えることです。
この記事では、回りくどい文章を無理なく丁寧に直す方法を、例文つきでわかりやすく解説します。
回りくどい文章とは何か
回りくどい文章とは、言いたいことは同じなのに、前置き・重複・言い換えの多さで必要以上に長くなっている文章です。
よくある特徴は、次のとおりです。
- 本題に入るまでが長い
- 一文が長く、要点が後ろにある
- 同じ意味を別の言葉で繰り返している
- 「させていただく」「〜のほど」などが続く
- 丁寧にしようとして、かえって不自然になっている
大事なのは、短くすること自体ではありません。
必要な情報は残しつつ、不要な遠回りだけを減らすことです。
回りくどい文章を丁寧に直す5つの方法
1. 用件を先に書く
丁寧に見せようとして前置きが長くなると、読み手は本題にたどり着くまでに疲れてしまいます。
たとえば、次のような文です。
回りくどい例
いつも大変お世話になっております。
このたび、先日ご相談させていただいておりました件につきまして、改めてご連絡を差し上げた次第でございます。
直した例
いつもお世話になっております。
先日ご相談いただいた件について、ご連絡いたします。
最初の一文で、何の連絡かが分かるだけで読みやすさは大きく変わります。
2. 一文に入れる内容を一つにする
一文が長いと、主語と述語が離れ、途中で意味を見失いやすくなります。
回りくどい例
ご提出いただきました資料につきまして、社内で確認を進めておりますが、一部確認したい点がございますので、ご都合のよろしいタイミングでご返信をいただけますと幸いです。
直した例
ご提出いただいた資料を確認しております。
一点、確認したい箇所がございます。
ご都合のよいタイミングでご返信いただけますと幸いです。
一文一義を意識すると、丁寧さを保ったまま、すっきり伝わります。
3. 文末を長くしすぎない
回りくどさは、文末にも出ます。
- 〜することができます
- 〜という形になります
- 〜させていただいております
- 〜いただけますでしょうか
これらは悪い表現ではありませんが、続くと重くなります。
言い換えの基本はシンプルです。
- 〜することができます → 〜できます
- 〜という形になります → 〜となります / 〜です
- 〜させていただいております → 〜しております / 〜いたします
- 〜いただけますでしょうか → 〜いただけますか
文末が短くなると、文章全体が引き締まります。
4. 「丁寧な言葉」を増やすより「適切な言葉」を選ぶ
伝わる敬語は、難しい言葉を重ねた文章ではありません。
場面に合った自然な言い方のほうが、かえって丁寧に伝わります。
たとえば、
- 幸甚に存じます → 幸いです
- 賜りますようお願い申し上げます → お願いいたします
- 何卒よろしくお願い申し上げます → よろしくお願いいたします
もちろん、かしこまった文面が必要な場面もあります。
ただ、日常的なメールや案内文では、自然で読みやすい敬語のほうが好印象です。
5. クッション言葉は必要なところだけ使う
やわらかさを出すために便利なのが、クッション言葉です。
- 恐れ入りますが
- お手数をおかけしますが
- 差し支えなければ
- 可能でしたら
ただし、毎文につけると逆に長くなります。
悪い例
恐れ入りますが、差し支えなければ、ご確認のほどお願いできますでしょうか。
よい例
お手数をおかけしますが、ご確認をお願いいたします。
クッション言葉は、依頼・断り・催促など角が立ちやすい場面で絞って使うのがコツです。
回りくどい敬語になりやすい表現と言い換え一覧
次の表現は、丁寧にしようとして長くなりやすい代表例です。
| 回りくどい表現 | 伝わる言い換え | ポイント |
|---|---|---|
| 確認させていただきます | 確認いたします / 確認します | 許可や恩恵が前面に出ない場面では、こちらのほうが自然 |
| 送付させていただきます | 送付いたします | 実務の連絡は簡潔で十分丁寧 |
| ご確認いただけますでしょうか | ご確認いただけますか | 「でしょうか」を重ねなくても失礼ではない |
| ご覧になられましたか | ご覧になりましたか | 二重敬語に注意 |
| お伺いさせていただきます | 伺います / お伺いします | 長くしすぎない |
| 〜のほど、よろしくお願いいたします | よろしくお願いいたします | 「のほど」は便利だが、多用するとぼやける |
| 幸甚に存じます | 幸いです | 読みやすさを優先しやすい |
| ご対応いただけますと幸いに存じます | ご対応いただけますと幸いです | 丁寧さは十分保てる |
特に気をつけたいのが、「させていただく」と二重敬語です。
「させていただく」は便利ですが、いつでも使えばよいわけではありません。
相手や第三者の許可を受け、そのことで自分が恩恵を受ける場面だと自然ですが、単なる事務連絡では「いたします」で十分なことが多いです。
また、
「ご覧になられる」
「お読みになられましたか」
のような表現は、丁寧そうに見えても、敬語を重ねすぎて不自然になりやすいので注意しましょう。
文章まるごと修正例
依頼のメール
修正前
お忙しいところ大変恐れ入りますが、もしご都合がよろしければ、添付資料につきましてご確認いただけますでしょうか。ご確認いただきました後に、ご意見等ございましたらご返信いただけますと幸甚に存じます。
修正後
お忙しいところ恐れ入りますが、添付資料のご確認をお願いいたします。
お気づきの点がございましたら、ご返信いただけますと幸いです。
改善ポイント
- 「もしご都合がよろしければ」を削って要点を前に出す
- 「ご確認いただけますでしょうか」を「ご確認をお願いいたします」に整理する
- 「幸甚に存じます」を「幸いです」に置き換えて自然にする
確認・報告のメール
修正前
先ほどお送りいただきました資料につきまして、こちらにて確認させていただいておりますが、数値に一部相違が見受けられましたため、念のため確認のご連絡をさせていただいた次第でございます。
修正後
先ほどお送りいただいた資料を確認しております。
数値に一部相違がありましたので、確認のためご連絡いたしました。
改善ポイント
- 「につきまして」「こちらにて」「次第でございます」を整理
- 一文を二つに分ける
- 本題を後ろに置かない
お詫びのメール
修正前
このたびは、弊社の不手際によりご迷惑をおかけしてしまいましたこと、誠に申し訳ございませんでした。今後このようなことが発生しないよう、再発防止に努めさせていただく所存でございます。
修正後
このたびは、弊社の不手際によりご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
今後は同様のことがないよう、再発防止に努めてまいります。
改善ポイント
- 謝罪は率直に書く
- 「〜してしまいましたこと」を簡潔にする
- 「努めさせていただく所存でございます」を自然な表現に改める
回りくどくしないためのチェックリスト
文章を書いた後は、次の点を確認すると整えやすくなります。
- 最初の2文で用件が分かるか
- 一文が長くなりすぎていないか
- 「させていただく」が続いていないか
- 「〜のほど」「〜につきまして」が多すぎないか
- 同じ意味の言葉を重ねていないか
- 読み手がすぐ行動できる書き方になっているか
- 丁寧さのために、わかりやすさを犠牲にしていないか
迷ったときは、「この文は相手が一度で理解できるか」と考えるのがいちばん確実です。
まとめ
回りくどい文章を丁寧に直すコツは、難しい敬語を増やすことではありません。
大切なのは、次の3点です。
- 用件を先に書く
- 一文を短くする
- 敬語を重ねず、自然な表現を選ぶ
丁寧な文章は、長い文章ではありません。
相手に負担をかけず、必要なことがきちんと伝わる文章です。
「丁寧にしよう」と思うほど長くなってしまう人ほど、
削ることも礼儀の一つ
と覚えておくと、文章がぐっと伝わりやすくなります。
