敬語が苦手な人は少なくありません。
「尊敬語と謙譲語の違いがわからない」
「“伺います”と“いらっしゃいます”をよく混同する」
「丁寧に言ったつもりなのに、かえって不自然になってしまう」
このような悩みは、とてもよくあります。
結論から言うと、敬語は“誰を立てるのか”を押さえると、一気にわかりやすくなります。
この記事では、敬語の基本から、尊敬語・謙譲語・丁寧語の違い、間違いやすい例、すぐ使える一覧表まで、初心者向けに整理して解説します。
敬語とは何か
敬語は相手への敬意や配慮を表す言葉
敬語とは、相手や話題に出てくる人への敬意、または聞き手への配慮を表す言葉づかいです。
ただ「目上の人に使う言葉」と覚えるだけでは不十分です。
実際には、相手との関係、その場の状況、伝え方の丁寧さなどを考えて選ぶ表現だと理解したほうが、使い分けしやすくなります。
学校で習う3種類と、文化庁が示す5種類の関係
学校では、敬語を次の3種類で学ぶことが多いです。
- 尊敬語
- 謙譲語
- 丁寧語
一方で、公的な整理では、敬語をもう少し細かく分けて考えることがあります。
ただ、初心者がまず押さえるべきなのは、やはり尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つです。
最初は3種類をしっかり理解し、余裕が出てきたら「謙譲語I・謙譲語II」「美化語」まで広げれば十分です。
尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いは「誰を立てるか」でわかる
3種類の違いが一目でわかる比較表
| 種類 | 何をする言葉か | 主語になりやすい人 | 例 |
|---|---|---|---|
| 尊敬語 | 相手や第三者を立てる | 相手・目上の人・話題の中心人物 | いらっしゃる、おっしゃる、ご覧になる |
| 謙譲語 | 自分側がへりくだって相手を立てる | 自分・自分の身内・自社の人 | 伺う、申し上げる、拝見する |
| 丁寧語 | 聞き手に丁寧に伝える | 誰でもよい | です、ます、ございます |
最重要ポイントはここです。
- 尊敬語は、相手側の人を高める
- 謙譲語は、自分側を低めて相手に敬意を示す
- 丁寧語は、文全体を丁寧にする
迷ったときの判断手順
迷ったら、次の順番で考えると整理しやすいです。
- その動作をするのは誰か
- その人を立てたいのか
- 聞き手に丁寧に伝えたいだけなのか
たとえば、
- 「部長が言う」→ 部長を立てるので 尊敬語
- 「私が部長に言う」→ 自分がへりくだるので 謙譲語
- 「私は言います」→ ていねいに言うだけなので 丁寧語
この考え方が、敬語の土台です。
尊敬語とは
尊敬語の意味
尊敬語とは、相手や話題に出てくる人の行動・状態・ものごとを高めて表す言い方です。
つまり、相手側の人を立てる敬語です。
たとえば、
- 先生が来る → 先生がいらっしゃる
- 社長が言う → 社長がおっしゃる
- お客様が見る → お客様がご覧になる
のように使います。
尊敬語の作り方
尊敬語には主に3つの作り方があります。
特別な言い方を使う
普通の言い方とはまったく違う形に変わるものです。
- 行く・来る・いる → いらっしゃる
- 言う → おっしゃる
- 見る → ご覧になる
- 食べる・飲む → 召し上がる
- する → なさる
まずはこのタイプを優先して覚えると実用的です。
「お・ご〜になる」を使う
多くの動詞は、次の形でも尊敬語にできます。
- 読む → お読みになる
- 利用する → ご利用になる
- 説明する → ご説明になる
汎用性が高い形なので、特別な尊敬語を知らない動詞でも対応しやすいです。
「れる・られる」を使う
尊敬語として、動詞に「れる・られる」を付ける形もあります。
- 書く → 書かれる
- 来る → 来られる
- 読む → 読まれる
ただし、受け身とまぎらわしいことがあるため、文章によっては
「お読みになる」のような形のほうがわかりやすい場合もあります。
尊敬語の例文
- 先生はもういらっしゃいました。
- 部長はその件をご存じです。
- お客様は資料をご覧になりました。
- 社長は昼食を召し上がります。
謙譲語とは
謙譲語の意味
謙譲語とは、自分側がへりくだることで、相手や向かう先に敬意を表す言い方です。
つまり、自分を下げて相手を立てる敬語です。
たとえば、
- 私が先生のところへ行く → 伺う
- 私が資料を見る → 拝見する
- 私が先生に言う → 申し上げる
のように使います。
謙譲語の作り方
特別な言い方を使う
- 行く・来る・尋ねる → 伺う
- 言う → 申し上げる
- 見る → 拝見する
- 会う → お目にかかる
- もらう・食べる・飲む → いただく
- する → いたす
「お・ご〜する」を使う
多くの動詞は、次の形でも謙譲語にできます。
- 待つ → お待ちする
- 持つ → お持ちする
- 案内する → ご案内する
- 説明する → ご説明する
この形はビジネスでもよく使います。
謙譲語の例文
- 明日、私がそちらへ伺います。
- その資料は、私が拝見します。
- 後ほど担当者に申し上げます。
- 会場まで私がご案内します。
「伺う」と「参る」の違い
ここは初心者がつまずきやすいところです。
- 伺う
→ 行き先・相手先を立てる気持ちが強い表現 - 参る
→ 自分の行動をへりくだって、聞き手に丁重に伝える表現
たとえば、
- 先生の研究室に伺います
- 明日、会場へ参ります
のように使います。
ざっくり言えば、相手先を立てるなら「伺う」、
改まって自分の行動を述べるなら「参る」と考えるとわかりやすいです。
丁寧語とは
丁寧語の意味
丁寧語とは、話し相手に対して、ていねいに述べる言い方です。
尊敬語や謙譲語のように、誰かを高めたり低めたりするのではなく、聞き手に失礼のない言い方に整えるのが基本です。
「です・ます・ございます」の使い方
代表的なのは、次の形です。
- です
- ます
- ございます
たとえば、
- 今日は会議です
- 今から向かいます
- こちらでございます
といった形です。
敬語に自信がないうちは、まず丁寧語を安定して使えるようにするだけでも、かなり印象が良くなります。
丁寧語の例文
- こちらが本日の資料です。
- ただいま確認します。
- ご不明点があればお知らせくださいますようお願いいたします。
- 受付は3階でございます。
尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分け方
主語が誰かを見る
敬語の判断で最初に見るべきなのは、その動作の主語が誰かです。
- 相手・目上の人が主語 → 尊敬語
- 自分・身内が主語 → 謙譲語
- 主語に関係なく丁寧に言いたい → 丁寧語
これだけでも、かなり間違いが減ります。
敬意を向ける相手が誰かを見る
次に、敬意を向けたい相手が誰かを考えます。
たとえば「伺う」は、自分がへりくだるだけでなく、行き先・向かう先を立てる言い方です。
そのため、誰に向かう動作なのかを意識する必要があります。
自分や身内を高めない
敬語で特に大事なのが、自分側を高めないことです。
たとえば、
- × 私のお考え
- × 父がいらっしゃいます
- × 弊社の社長がおっしゃいました(社外の相手に対して)
のような言い方は不自然になりやすいです。
自分、自分の家族、自社の人は、社外の相手に対しては基本的に身内側として扱います。
間違いやすい敬語
尊敬語と謙譲語を取り違える例
よくあるのが、相手に使うべき場面で謙譲語を使ってしまうミスです。
たとえば、
- × 担当者に伺ってください
- ○ 担当者にお尋ねください
- ○ 担当者にお聞きください
「伺う」は自分側が使う謙譲語なので、お客様の動作には使えません。
ほかにも、
- × 課長、そのファイルも会議室にお持ちしますか
- ○ 課長、そのファイルも会議室にお持ちになりますか
も典型的です。
二重敬語とは
二重敬語とは、同じ種類の敬語を重ねることです。
たとえば、
- × ご覧になられます
- ○ ご覧になります
- × おっしゃられました
- ○ おっしゃいました
- × 拝見させていただきます
- ○ 拝見します
敬語は丁寧にすればするほど良いわけではありません。
重ねすぎると、かえって不自然になります。
使いすぎるとかえって不自然になる表現
敬語は過剰にすると読みづらく、聞きづらくなることがあります。
たとえば、何でもかんでも「させていただく」にすると、文章が重くなります。
- 確認させていただきます
- 説明させていただきます
- 送付させていただきます
もちろん適切な場面もありますが、毎回使う必要はありません。
- 確認いたします
- ご説明します
- お送りします
のほうが自然なことも多いです。
よく使う言葉の敬語変換表
動詞の基本変換一覧
| 基本形 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| 行く | いらっしゃる・おいでになる | 伺う・参る | 行きます |
| 来る | いらっしゃる・お越しになる | 伺う・参る | 来ます |
| いる | いらっしゃる | おる | います |
| 言う | おっしゃる | 申し上げる・申す | 言います |
| 見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
| 食べる・飲む | 召し上がる | いただく | 食べます・飲みます |
| する | なさる | いたす | します |
| 知る | ご存じだ | 存じる・存じ上げる | 知っています |
| 会う | お会いになる | お目にかかる | 会います |
| 尋ねる・聞く | お尋ねになる・お聞きになる | 伺う | 尋ねます・聞きます |
全部を一度に覚えなくても大丈夫です。
まずは行く・来る・言う・見る・するの5つを優先して覚えると、かなり実用的です。
シーン別の敬語例文
会社で使う敬語
- 部長はただいま席を外していらっしゃいます。
- その件は私から担当者に申し上げます。
- 会議資料をご説明します。
- 本日中にメールでお送りします。
電話で使う敬語
- 〇〇株式会社でございます。
- 担当の者はただいま外出しております。
- 戻りましたら、こちらからご連絡いたします。
- どのようなご用件か伺ってもよろしいでしょうか。
メールで使う敬語
- いつもお世話になっております。
- ご連絡が遅くなり、申し訳ございません。
- 添付資料をお送りいたしますので、ご確認ください。
- ご不明点がございましたら、お気軽にお知らせください。
敬語を自然に使えるようになるコツ
丸暗記より「主語」と「相手」を意識する
敬語は表だけ暗記しても混乱しやすいです。
大切なのは、誰の行動か、誰に敬意を向けるかを毎回考えることです。
よく使う動詞だけ先に覚える
最初から全部覚える必要はありません。
まずは次の基本動詞を固めましょう。
- 行く・来る
- 言う
- 見る
- する
- 食べる・飲む
このあたりが使えるようになるだけで、日常会話もビジネス文もかなり安定します。
まずは丁寧語を安定させる
敬語が苦手な人ほど、いきなり難しい尊敬語や謙譲語を増やしすぎないほうがうまくいきます。
まずは、
- です・ます
- ございます
- いたします
- お願いいたします
など、基本の丁寧な言い方を自然に使えるようにすると、その上に尊敬語・謙譲語を積み上げやすくなります。
まとめ
敬語の違いは、次の3つで整理するとわかりやすくなります。
- 尊敬語:相手や第三者を立てる
- 謙譲語:自分側がへりくだって相手を立てる
- 丁寧語:聞き手に丁寧に伝える
そして、迷ったときはこの順番で考えてください。
- 動作をするのは誰か
- その人を立てるのか
- 聞き手に丁寧に言いたいだけなのか
この考え方が身につくと、敬語は単なる暗記ではなく、自分で判断できる知識になります。
一覧表を丸暗記するより、
「誰を立てるか」で見分けることを意識すると、敬語はずっと使いやすくなります。
