「いただきます」と「くださいます」の違い|敬語の使い分け

「いただきます」と「くださいます」は、どちらも相手への敬意を含む表現ですが、敬語の種類文を見る視点が違います。

簡単に言うと、
いただきますは「自分がしてもらう」側から述べる言い方、
くださいますは「相手がしてくれる」側から述べる言い方です。

そのため、同じ出来事でも、どこに視点を置くかで表現が変わります。文化庁の解説でも、「いただく」は謙譲語Ⅰ、「くださる」は尊敬語とされ、場面によってはどちらも適切に使えると説明されています。

目次

「いただきます」と「くださいます」の違いを先に整理

スクロールできます
表現敬語の種類基本の意味視点
いただきます謙譲語Ⅰしてもらう・もらう自分が恩恵を受ける側
くださいます尊敬語してくれる相手が行為をしてくれる側

たとえば、同じ「先生が資料を送る」という出来事でも、次のように言えます。

  • 先生が資料を送ってくださいます
  • 私は先生に資料を送っていただきます

内容は近いですが、前者は先生の行為を立てる言い方、後者は私が恩恵を受ける言い方です。 ([文化庁][1])

「いただきます」は自分側から見た表現

「いただきます」は、動詞の基本形で言えば「いただく」です。
これは「もらう」の謙譲語で、自分側が相手から恩恵を受けることを丁寧に述べるときに使います。文化庁では、「先生に指導していただく」のように、行為者を「先生に」と置いて表す形が示されています。 ([文化庁][2])

例文

  • 本日はお時間をいただきます
  • ご確認いただきますようお願いいたします。
  • 先日は丁寧にご説明いただき、ありがとうございました。

この表現は、お願い文感謝の文でとてもよく使われます。
「相手に何かをしてもらう」「その恩恵を受ける」という感覚が中心にあります。

「くださいます」は相手側の行為を立てる表現

「くださいます」は、基本形で言えば「くださる」です。
これは「くれる」の尊敬語で、相手が何かをしてくれる行為そのものを立てる言い方です。文化庁は、「くださる」について、相手の行為を高めるだけでなく、その行為が自分にとってありがたいという意味合いも含むと説明しています。 ([文化庁][2])

例文

  • 先生がご指導くださいます
  • 早速ご返信くださいますと幸いです。
  • 丁寧にご案内くださり、ありがとうございました。

こちらは、相手の動作を前に出したいときに自然です。
「相手がしてくれる」という見え方がはっきりするため、相手の親切さや配慮を前面に出したい場面に向いています。 ([文化庁][2])

使い分けのコツは「誰を主語にしたいか」

迷ったときは、まず文の主語を心の中で補うとわかりやすくなります。

相手が主語なら「くださいます」

  • (先生が)説明してくださいます
  • (お客様が)利用してくださいます

相手の行為を中心に述べるなら、「くださいます」が自然です。

自分が受ける側なら「いただきます」

  • (私が先生に)説明していただきます
  • (私どもが皆さまに)利用していただきます

自分が恩恵を受ける立場で述べるなら、「いただきます」が自然です。

感謝の表現では、どちらも使えることがある

実際の日本語では、感謝の場面で

  • ご連絡いただきありがとうございます
  • ご連絡くださりありがとうございます

のように、どちらも成り立つことがあります。

文化庁の資料でも、「御利用いただく」と「御利用くださる」は、基本的にはどちらもほぼ同じように使えるとされています。敬意の強さに大きな差があるというより、どちらの視点で述べるかの違いと考えるとわかりやすいです。

ただし、受け取り方には個人差があります。
文化庁も、「いただく」の使い方を不自然だと感じる人がいることには注意が必要だとしています。相手や業界によっては、言い回しを少し調整した方が無難です。

お願いの文ではどう使い分ける?

依頼の文でも、両方が使われることがあります。

  • ご確認いただきますようお願いいたします
  • ご確認くださいますようお願いいたします

どちらも敬語として成り立ちますが、前者は相手にしてもらうことをお願いする形、後者は相手がしてくれることを丁寧に求める形です。文化庁の例でも、「お知らせいただけますと幸甚です」「お知らせくださいますと幸甚です」の両方が示されています。

実務では、次のように考えると使いやすくなります。

  • 事務的・依頼文らしく整えたい
    → 「いただきますよう」
  • 相手の配慮や協力に敬意を向けたい
    → 「くださいますよう」

どちらが絶対に正しいというより、文全体のトーンに合わせるのが大切です。 ([ことば研究館 | 国立国語研究所][3])

よくある間違い

「先生がご指導いただきました」は不自然

これは、主語と敬語の向きがずれている例です。

  • × 先生がご指導いただきました
  • ○ 先生がご指導くださいました
  • ○ 私は先生にご指導いただきました

「いただく」は「もらう」の側から述べる言い方なので、受ける側を主語に考える必要があります。文化庁も、「先生が指導していただいた」のような形は不適切だと説明しています。 ([文化庁][1])

「ご案内していただく」は避けた方がよい場合がある

文化庁は、「御案内してくださる」「御案内していただく」のような形について、文脈によっては不適切になりうるとし、「ご案内くださる」「ご案内いただく」の形が適切だと示しています。 ([文化庁][1])

たとえば、次のように直すと自然です。

  • △ ご案内していただき、ありがとうございます
  • ○ ご案内いただき、ありがとうございます

細かい違いに見えますが、敬語表現ではこの差が意外と大切です。

迷ったときに使いやすい言い換え

「いただきます」と「くださいます」のどちらがよいか迷うときは、無理に難しい形を選ばず、より伝わりやすい表現に言い換えるのも有効です。

使いやすい言い換え例

  • ご対応ありがとうございます
  • ご連絡ありがとうございます
  • ご確認をお願いいたします
  • ご説明に感謝申し上げます

特に、接客文や案内文では、少しシンプルにした方が自然で読みやすいことも少なくありません。敬語は「難しいほどよい」のではなく、相手に違和感なく伝わることが大切です。文化庁の「敬語の指針」でも、個々の語形だけでなく、その場に合った適切な表現を選ぶ姿勢が重要だと示されています。

まとめ

「いただきます」と「くださいます」の違いを一言でまとめると、次の通りです。

  • いただきます:自分がしてもらう側から述べる
  • くださいます:相手がしてくれる側から述べる

この違いがわかると、
「どちらがより丁寧か」で迷うより、
どちらの視点で書くと自然かで判断できるようになります。

迷ったときは、次の順で考えると失敗しにくいです。

  • 相手の行為を立てたい → くださいます
  • 自分が恩恵を受ける形で述べたい → いただきます
  • どちらも迷う → 無理せず言い換える

敬語は、正しさだけでなく、読み手が自然に受け取れるかも大切です。
形にこだわりすぎず、相手との関係や文の目的に合わせて使い分けていきましょう。

この記事を書いた人

敬語・丁寧表現、メール・LINEの文例、言葉の意味や違い、言い換え表現、表記ゆれなど、日常や仕事で迷いやすい日本語表現を実用重視で解説しています。
辞書・公的情報・一般的な使用実態などを確認しながら、初心者にもわかりやすい記事作成を心がけています。

目次