基礎知識 発達障害ってなに?
発達障害ってなに?
はじめにお伝えしたいこと
前提を確認しておきましょう
前提としてお伝えしたいことが2点あります。
1.発達障害は、子どもにレッテルを貼るために診断されるものではない 子どもの特性を周囲で共有することで、困り感を和らげつつ、子どもに則した支援につなげられます
2.脳の機能的な問題であり、育て方や環境のせいではない 「◯◯をして発達障害が治った」「発達障害は◯◯のせいでおきる」などの情報がソーシャルメディア、書籍などで散見されます。 日本のみでなく、世界的にみても、発達障害は生まれつきの脳の機能的問題と定義されています。 特性によっては、内服治療を行う場合もありますが、あくまでも症状を和らげるものであり、根治するため治療ではありません。
子ども、大人問わず、気になる点があれば病院を含む専門機関への相談が第一選択肢となることを期待します。 もう少し、詳しい情報が知りたいかたは、下部に記載している厚生労働省のページを確認されてみてください。
発達障害とは?
生まれつきの特性による発達の偏り
DSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)において、発達障害という用語は神経発達障害/神経発達症というカテゴリーに分類され表記されています。神経発達障害/神経発達症は脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活を始め幼稚園・保育園、学校生活で起こる機能的な問題が出現する状態を指しています。
大人になって会社などで問題を顕になることもあります。これらの問題は、子どもが頑張っていない(頑張れない)、親のしつけが悪い、成長する環境が悪いなどの原因ではなく、基本的に脳の機能的な問題で起こるという見解で一致しています。
「発達障害者支援法(2016年改正)」では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。 この診断基準を用いて診断を行うことができるのは専門の医師のみです。病気や障害の可能性を感じた際は、適切な指導・療育・支援を受けるためにもインターネットや周囲の情報に左右されるのではなく、医療機関を含めた専門機関への受診・相談をお願いします。
発達障害(神経発達障害/神経発達症のカテゴリーは、以下8つの分類に分けられています。
・知的能力障害群
・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
・注意欠如・多動症/注意欠如・多動障害
・限局性学習症/限局性学習障害
・運動症群/運動障害群
・チック症群/チック障害群
・他の神経発達症群/他の神経発達障害群
この分類から、さらに下位分類に分けられています。 同じ診断名であっても、子どもの個性や発達の状況、年齢、置かれている環境、知的障害の有無などの要因によって多彩な症状を呈します。また、他の障害が重なり合っているのも発達障害の特徴一つです。
本ページでは、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害について掘り下げて解説します。他にも解説が欲しい方がいれば教えて下さい!
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)はコミュニケーションを行う場面で、相互的なやりとりをしたり、相手の気持ちを読み取ることが苦手とされています。またこだわりが強い、特定の事柄に強い興味を示す、感覚が過敏といった特徴をもつ発達障害の概念のひとつです。
正確にお伝えすると
・他者との社会的関係の形成の困難さ
・言葉の発達の遅れ
・興味や関心が狭く特性のものにこだわる
これらの特徴が3歳ぐらいまでに現れることが多いとされています。
自閉スペクトラム症が疑われるいくつかの例を挙げます。
・視線が合わない、合いにくい
・名前を呼んでも振り向かない
・人見知りをしない
・ひとりごとが多い
・指差しに反応できない
・一人遊びが多い
※これらの特徴はあくまでも操作的に定義されたものです。「自閉スペクトラム症だから〇〇だ」と断定することは絶対に避けてください。正確な診断は専門の医師による問診・面接・検査が必要です。
注意欠如・多動症
注意欠如・多動症(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)は「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつです。
正確にお伝えすると
・「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めない)」と「多動-衝動性」(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人の邪魔をしてしまう)が同程度年齢の発達水準と比べて頻繁に強く認められること
・症状のいくつかが12歳以前より認められること
・2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
・発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
・その症状が、統合失調症、またはその他の精神病性障害の経過中に起こることではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
とされています。
注意欠如・多動症が疑われるいくつかの例
・周囲が気になり落ち着かない
・今しないといけないことに集中できない
・優先順位をつけらない・難しい
・物を無くす・忘れる
・約束を忘れる
※これらの特徴はあくまでも操作的に定義されたものです。「注意欠如・多動症だから〇〇だ」と断定することは絶対に避けてください。正確な診断は専門の医師による問診・面接・検査が必要です。
学習障害
学習障害(Learning Disorders/Learning Disabilities/Learning. Differences)は基本的には全般的な知的発達に遅れはありませんが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態を指す発達障害の概念のひとつです。
学習障害は、教育的立場でのLDと医学的立場でのLDの2つの考え方があります。
◆教育的立場
全般的な知的発達に遅れはないものの聞いたり話したり、推論したりする力など学習面での広い能力の障害を指します。
◆医学的立場
読み書きの特異的な障害、計算能力など算数技能の獲得における特異的な発達障害を指します。
このページでは、医学的立場での学習障害(限局性学習症)について解説します。
◆読字障害・読みの困難(ディスレクシア)
読む能力に困難があり、結果として文字を書くことにも苦手が生じる状態を指します。
いくつか特徴を挙げると
・似た文字が理解できない。「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」など
・小さい文字「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない
・文字を一文字ずつ読む(逐次読み)
・音読しているとどこを読んでいるかわからなくなる
・文字をなぞりながらでないと読めない
・読みにくいところを飛ばして読む
・文字を読んでいるとすぐに疲れる
といった特徴が見られます。
◆書字表出障害・書き困難(ディスグラフィア)
文字が読めるけど書けない状態を指します。
いくつか特徴を挙げると
・鏡文字(文字が反転)や似ている雰囲気の文字を書く
・誤字脱字や書き順の間違いが多い
・黒板の板書に時間がかかる
・ひらがなより漢字が苦手で覚えられない
・文字の形や大きさがバラバラになったりする
といった特徴が見られます。
◆算数障害・算数、推論の困難(ディスカリキュリア)
基本的な数字や、計算式で使用する記号を認識することが困難な状態を指します。
いくつか特徴を挙げると
・簡単な数字、記号を理解しにくい
・繰り上げ、繰り下げができない
・数の大きい、小さいがわからない
・文章問題が苦手、理解ができない
・図形やグラフが苦手、理解できない
といった特徴がみられます。
※これらの特徴はあくまでも操作的に定義されたものです。「学習障害だから〇〇だ」と断定することは絶対に避けてください。正確な診断は専門の医師による問診・面接・検査が必要です。
専門機関へ相談をお願いします
何度もしつこく言ってすみません!
ソーシャルメディアの不確かな情報に惑わされるのではなく、心配の種があるのであれば、病院を含む専門機関への相談を行ってください。 発達障害は”どう治すか”ではなく、”どう支えるか”が適切だと思っています。子どもの頃に失敗体験を重ねることで、精神症状を呈する、二次障害を発症することもあります。前述したように子どもの個性や状況に応じた支えが必要です。
参考・引用資料
1.American Psychiatric Association(著),日本精神神経学会(日本語版用語監修),高橋三郎,大野裕(監訳)DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院,20142.発達障害者支援法(平成28年一部改正)2016
3.厚生労働省,発達障害の理解,令和元年度就労準備支援事業所研修
4.厚生労働省,知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス
5.発達障害ってなんだろう(政府広報オンライン)
6.田中康雄(監修),発達障害の子どもの心と行動がわかる本,2014
7.文部科学省 主な発達障害の定義について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm