まず周知してほしいこと

個人差が大きいから比べないで

言葉の発達は個人差がとても大きいです。「お姉ちゃんのときは○歳でこれはしゃべれた」「他の園の子たちはこれができる」とできないところがフォーカスされやすく今現在できていることに目を向けることが難しくなります。

よく耳にする、○歳で△△ができるは平均値であり目安と考えましょう。同じ年中さんでも4月生まれの子どもと3月生まれの子どもでは、11ヶ月も生まれてからの時間に差があります。まずはあせらず、優しい気持ちで子どもを見守ってあげましょう。

心配なときは、お近くの相談できる施設に行ってみるのも1つの方法と思います(どこに相談したら良い?のページに情報を記載していますの参考にしてください)。

このページでは、生まれてから言葉が出始める2歳ごろまでを解説します。

新生児の時期

大事な「泣く」という手段

赤ちゃんにとって唯一のコミュニケーション手段が泣くことです。育児をしているお父さん・お母さんからすると「よく泣くから大変」「なんで泣いているのかわからない」との声をいただくことがあります。

赤ちゃんが泣く理由として

・お腹がすいた
・おしっこ/うんこが出た、蒸れて気持ち悪い
・体調が悪い
・眠たい
・疲れた
・心配
・寒い/暑い
・甘えたい
・ゲップが出そう
・ストレスを発散したい

などなど、自分の生理的な要求をお知らせしてくれています。この時期の赤ちゃんは自分の気持ちを「泣く」という手段で発信しているだけとされています。

赤ちゃんが泣き始めたら、お腹空いてないかな?おむつ濡れてないかな?体調悪くないかな?寒くないかな?暑くないかな?などの子どもが不快に感じることがないかを確認してあげましょう!

「泣く」反応にお父さん・お母さんが対応してあげて、赤ちゃんの中にある要望に答えることができると自然と泣き止みんでいきます。すると赤ちゃんの中で「泣いたらお父さん・お母さんが要望に応えてくれる」という経験に変わっていきます。これがコミュニケーションの第一段階です。

乳児期

発声が安定してきます

生後1ヶ月〜2ヶ月ごろになると、赤ちゃんは「あー」「うー」といった母音を使った柔らかい声を出すようになります。これはクーイングと言います。これは赤ちゃんがご機嫌のときに多く発するもので新生児の時期に見られていた「泣く」とは違う発声と言えるでしょう。つまり発声する機能が成長しているとも考えることができます。

クーイングは反応してあげると止まることもあれば反応が大きく広がっていくことがあります。まだまだ一方向的ですが、相手を認識して反応を楽しんでいる視点から見るとコミュニケーションの第二段階と言えます。

どんな働きかけが良いの?と悩む方が多いと思います。
「これをしないといけない!」を力むんではなく、泣いたり、笑ったり、クーイングが出現したときに言葉をかけたり、反応してあげれば大丈夫です。

喃語

発音の要素が入ってきます

生後6ヶ月〜8ヶ月ごろになると、「ばば」「ぶぶ」といった子音と母音で構成された声を出すようになります。これを喃語と言います。口の成長と共に発音するための器官が成長してきます。そのおかげで喉から声を出すだけだったのが唇を破裂させるように発音するバ行やパ行の発音ができるようになります。

クーイングから喃語へ移行している段階では、発音できる種類も少なく、言葉の長さも短いです。生活の中で喃語の出現回数が増えてくると呼吸する力・口の力が成長し、話す言葉が長くなっていきます。長くなるにつれ子音と母音が混ざった音のレパートリーが増えてきます。

指さし

コミュニケーションの要素が急増

9ヶ月から1歳ごろになると、今まで見られていた喃語が徐々の姿を消していきます。そのかわりに指さしが台頭してきます。この時期になると表情豊かになり、自分の気持ちを共有しようとし始めます。

この指さしは発達においてとても重要なコミュニケーション行動です。子どもが自分以外を認識して目的や手段を理解していると捉えることができます。

「指さし」には様々な意味が隠れています。

・自分が欲しいものを伝える
・自分の感情をを共有する
・親の関心を引く

子どもが指さした先には何かあるはずです。意味のある言葉は話せなくても、赤ちゃんなりのコミュニケーションを大人に対して行っているので、少し気にかけてみましょう。言葉を使ったコミュニケーションは目の前にきています!

少し横道に…
「指さしが出ないけど、親の手をもって物を取ろうとすることがある」という例があります。専門用語ですが、親の手をクレーンのように使用することから「クレーン現象」と呼ばれています。

「クレーン現象があるから、発達障害ですか?」違う違う、違います!
赤ちゃんや子どもが言葉や指さしを手段として使うことができないために起きる行動の一つです。

クレーン現象が出現したら「おっ?何がしたいのかな?」などと、子どもが伝えたいことや共有したいことを一緒に確認しながらコミュニケーションをとっていきましょう。成長する中で自分の気持ちを伝える方法が増えることで自然と消滅していきます。

1語文

初語が見られ始める時期

1歳ごろになると、意味のある言葉「初語」が見られ始めます。「ママ」「わんわん」「ブーブー」など、言葉と物や生き物の意味が結びついていることがわかるようになります。

自分の気持ちを伝えられるようになることで、周囲への興味関心が広がっていきます。たくさんの物に触れて、感じて言葉のバリエーションがどんどん増えていく時期でもあります。また一つの言葉にもたくさん伝えたい内容が隠れています

「わんわん」。犬が吠えている。犬が怖い。犬が可愛い。など。コミュニケーションのコツとしては、子どもが話した言葉に対して反応してあげることです。むやみやたらに声をかける、子どもが興味を示していない物の話をする、目の前にないことの話をすることは言葉の発達にあまり有効でないかもしれません。

まずは、目の前の体験を子どもと楽しみましょう!!


※初語の時期はかなり個人差がありますのでご注意ください。「まだ初語が出てない」と不安になることがあると思いますが、焦らず、ゆっくりと見守ってあげましょう。2歳ぐらいになっても初語が出ない場合は相談できる機関へ相談してみましょう。

2語文

言葉を中心とした会話可能になる

2歳ごろになると、2語文が見られ始めます。「わんわん、いた」「ちゃちゃ、ちょうだい」など2つの単語からなる文のことを言います。

この時期の言葉は、「何しゃべっているの?」と大人が感じるような言葉をぶつぶつと話している子どももいますが他の発達に問題がない(可能性が低い)、大人の話す言葉を理解している、ようであればゆっくりでも話せるようになっていきます。

いろんな言葉を知って、話そうとする時期でもあります。よくわからない言葉から言い間違いながら言葉を話すようになってきます。

「靴下」を「ちゅくった」
「テレビ」を「てびり」
「牛乳」を「にゅにゅ」

など「発音が悪いのかな?」と疑う方が多いと思います。これは子どもの中で言葉がまだまだ完成していない時期に見られる特徴でよく相談を受ける「発音の問題」とは異なります。気になる際は言語聴覚士に相談してみてください!



2歳までの言葉の成長をまとめてみましたが、言葉を「教えるもの」ではなく「遊びや体験が言葉を育む」ということを知ってもらいたいと思っています。

遊びの成長については別の記事にまとめて記載する予定ですのでお楽しみにしていてください。

参考文献・引用文献

1.岩立志津夫編集,よくわかる言語発達[改訂新版].ミネルヴァ書房.2017
2.玉井ふみ編集,標準言語聴覚障害学 言語発達障害学.医学書院.2013
3.鈴木直光著,発達障がいに困っている人びと.幻冬舎ルネッサンス新社.2018