きつおんの基礎的なこと

話し言葉が滑らかに出ない発話障害

「吃音」という言葉をご存知でしょうか?「どもる」という言葉で耳にする機会が多いと思います。 わかりやすい表現として、「滑らかに言葉が出にくい・出ない」状態と指します。 ここでは、吃音ってどんな症状があるの?というところを解説したいと思います。 

中核症状

話すときの特徴として出現する症状

吃音において中核症状を呼ばれる症状です。大きく3種類の症状で説明されます 

◆繰り返し(連発・音節の繰り返し)
「ぼ、ぼ、ぼくは」、「やや、やきゅう」など、音を繰り返してしまう症状です。

◆引き伸ばし(伸発・音の引き伸ばし)
「きーーのうね」、「ごーーはん」など、子音や母音の部分を伸ばすように音声化された症状です。

◆ブロック(難発・阻止)
「、、、あしたね」、「、、、っっしたよ」など、言葉を話そうとしても言葉が詰まるように出てこない症状です。

など、話そうとしたとき、声が出ない症状です。 これらの症状がある場合は、出現する頻度は少なくても吃音と診断される場合があります。

その他の症状(二次的症状)

中核症状以外で出現する症状

吃音症状から抜け出そうとすることで発生するとされています。

◆随伴症状
吃音症状から抜け出すために身体を動かす症状です。
たとえば、「体を前後に動かす」「口を捻る」「過度な瞬き」「異常呼吸」「手足を動かす」といった特徴が見られます。
 チック症状は無意識で身体が動きますが、随伴症状の場合意識的に動かすことが多いです(無意識のこともある)

◆工夫や回避
吃音が出ないように話し方を工夫したり、吃音の症状が出るからと話したいことを話さなかったり、話すこと自体を行わない症状です。
たとえば、「言いたいことばを遠回しな表現で説明する」「吃らないよう意図的に準備をして声を出す」「苦手な言葉を省略する」「小さい声で話す」「話さない」といった特徴が見られます。

◆予期不安
「吃音の症状が出るかも」と話す前に不安になってしまう症状です。
たとえば、「この前も、吃ったからまた吃っちゃって恥ずかしい気持ちになるかも」といった失敗体験からくる特徴が見られます。

◆情緒性反応
吃音の症状に伴って起きる精神的な反応が出る症状です。
たとえな、「吃音が出ることでイライラする」「情緒が不安定になる」「話すことに対する敏感な反応」「過度に恥ずかしそうに振る舞う」といった特徴が見られます。

吃音の基礎知識

分類や症状について

吃音は主に

◆発達性吃音:3〜5歳にかけて発症する
◆獲得性吃音:神経原性吃音と心因性吃音

の2つに分類されます

発達性吃音の特徴
・幼児で2語文以上の話しを始める時期に起きやすい
・発病に起きる国や言語の差はほとんどない
・有病率は全人口の0.8%程度
・男女比は男性の方が多く、4:1程度

獲得性吃音の特徴
・脳の損傷、神経の病気により発症する
・心理的なストレスや外傷体験により生じる
※どちらも10代後半以降の発症のため、発達性吃音とは異なります。

これらを踏まえ、今現在、吃音に関する明確な要因は明らかになっていません(体質的要因、発達的要因、環境要因など種々の仮説があります)。断言できることとして、誰かのせいで吃音が発症した、吃音が重くなった、ということにはならないということをご理解していただきたいです。

相談を受けていて感じること

正しい認識が広がってもらいたい

吃音の当事者・家族を支援する言語聴覚士として、少しでも多くの人に吃音の正しい理解が広まることを祈って発信させていただきます。

参考文献・引用資料

1.バリー・ギター著,長澤泰子監訳.吃音の基礎と臨床.学苑社.2007
2.菊池良和著,福井恵子,長谷川愛,吃音Q&A 吃音のエビデンスを知りたい方へ2021
3.都筑澄夫,改訂 吃音.建帛社,2008