基礎知識 それってホント?吃音ウワサ
それってホント?きつおんのウワサ
Q&Aの前に
ソーシャルメディアの流行と共に、正しい情報と誤った情報が乱立した時代になった感じます。[吃音]と検索すると、「こうすれば治る」「吃音は〇〇が原因」など事実無根の情報が目につきます。
実際に相談や訓練を行ってみても、「〇〇にはこう書いてあったけど本当ですか?」と質問されることも少なくありません。
Q&Aでは、私自身が実際に受けた質問やソーシャルメディアに書いて怪しい情報をまとめたものとなっています。もし、「こんなことが書いてあったんですが本当ですか?」等の質問があれば、ぜひ教えてください。Q&Aに追加しながら正しい情報をお伝えしていきたいと思います。
吃音のことには触れない、隠したほうが良い?
正解は…【❌】です
触れないほうが良い、隠したほうが良いということはありません。
吃音の影響で、「どもりたくない」と思い込んでしまい、コミュニケーションや社会参加に消極的になってしまう方がたくさんいらっしゃいます。
消極的になった結果、「吃音=悪いこと」と自己解決しまい社会不安障害(対人恐怖症)などの二次的な問題に繋がる可能性があります。 また、「どもりたくない」からと話すことを避ける(回避)、「どもりたくない」と話す直前に不安な気持ちになってしまう(予期不安)などが出現してくると悪循環から抜け出すのが難しくなってきます。
「触れない、隠したほうが良い」ではなく、「信頼できる家族、相談者に悩みを相談する」とした方が良いと思います。
吃音は自然と治るから、何もしなくて良い?
正解は…【❌】です
吃音は発症後4年で74%の子が自然に回復すると言われています。また、男性より女性の方が回復しやすいという情報もあります。
この情報を見て「7割は自然に治るから気にしなくて良いかな?」ではなく、自然に治癒しなかった場合を想定して、吃音に関する情報を集める、言語聴覚士のいる病院や施設に相談を受けたるなどして今後の対応方法を考えていく必要があると思います。
吃音を発症したのは親の育て方のせい?
正解は…【❌】です
吃音は2〜4歳頃、発症する子どもが多く、その4割が急に発症します。そのため、3歳児健診までに約60%の子どもがご両親に発見される、専門家に指摘されるケースが多いです。
吃音の発症は多因子説が支持されていますが、明確な原因はまだ分かっていません。有病率についても、アメリカ、ヨーロッパなど、人種や文化が違っても吃音の発症率は変わらない事実があることから、「育児方法が原因では?」と不安に思っている方には、自身を持って「違います」とお伝えしたいです。
吃音は意識させると重たくなる?
正解は…【❌】です
「意識」や「気づき」と表現しても良いかもしれません。2歳ぐらいの子どもでも、半数以上は吃音を自覚している、気づいているとされています。
「気づいていない」からできること、「気づいている」からできること、どちらのパターンでもできることはあります。大切なことは、子どもが「なんでつっかえるの?」という純粋な質問に対して、「いけない質問をしちゃった」「吃音って悪いことなんだ」と勘違い させてしまうことです。少なくとも、家族の間で吃音の話ができることで家族に助けを求めることができる構図が大切だと思っています。
利き手を矯正したから吃音を発症した?
正解は…【❌】です
これは、はっきりと否定されています。利き手矯正説や診断起因説(吃音と決めつけたから、吃音を発症した)は研究調整の結果、全て否定されています。
そのため、利き手を矯正することと、吃音になることは関係ありません。また、左利きだから、両利きだから、吃音になったなどの説も現時点ではないと思われます。
吃音は子どものメンタルが弱いせい
正解は…【❌】です
吃音の方は、その経験から苦手な言葉を話す前に予期不安が生じます。また、苦手な場面だけでなく、人前で話すこと、電話など、特定の場面でもどもらないか不安になります。
吃音のない方でも、緊張する場面では赤面し手足が震え、胸がドキドキします。
だから、「メンタルが弱いせいで吃音になった」ということは間違いで、メンタルが強い方でも、弱いか方でも吃音の方はいらっしゃることを知っていただきたいです。
特に不安・恐怖は過去の体験の積み重ねです。不安・恐怖の積み重ねの影響で吃音を発症するのではなく、吃音による経験の積み重ねが不安・恐怖を引き起こし回避につながってしまうのです。
吃音は緊張すると出る
正解は…【❌】です
緊張が高い場面(人前でのスピーチ、電話など)、自身の経験から予期不安が生じひどく吃ってしまうことはあります。
しかし、リラックスした会話の中でも吃ることが増えることもあります。特定の場面では吃るけど、この場面では吃らないなどもあります。
ここでお伝えしたいことは、適度な緊張の中で「今、吃ったかな?」とかるく注意を向ける程度で吃音を減らしていくことです。
参考文献・引用資料
1.菊池良和著,エビデンスに基づいた吃音支援入門,学苑社.2012
2.菊池良和著,福井恵子,長谷川愛,吃音Q&A 吃音のエビデンスを知りたい方へ2021
3.都筑澄夫,改訂 吃音.建帛社,2008