基礎知識 周りの人にお願いしたいこと
周りの人にお願いしたいこと
吃音で悩む家族・友人がいる方々へ
あなたの心づかいに感謝します
このページを読んでくださる方は、「自分に何かできることはないか?」と考えている方だと思います。まずは、その気持ちをもっていただけたことが吃音で悩む方にとって何にも変えられない支援だと思います。
そのことを踏まえて、吃音の相談や練習を行っている言語聴覚士の目線でどのような支援や配慮が望ましいのかを説明します。
もし、これはどうなのかな?と思う方がいらっしゃれば質問していただけると回答できると思いますのでよろしくお願いします。
Point①話し方のアドバイスをしない
アドバイスは逆効果かも?
吃っているからといって、「ゆっくり話して」、「落ち着いて」などのアドバイスは逆効果になることが多いです。特に子どもの場合、親の期待に応えるために「頑張って話そう!」とします。成功することもあると思いますが、失敗する経験が多く重なってしまうこともあります。この失敗体験が繰り返されることで、自己肯定感が下がっていき悪い悪循環を起こしてしまう危険性があります。
Point②ことばを先取りしない
聞き上手になりましょう
「言葉がつまってきつそう」だからと、言葉を先取りしてしまうことはできるだけ避けてもらいたいです。一度の体験として、「理解してもらえた」という経験は大切だと思います。しかし、一生懸命に自分の言葉で伝えようとした言葉を先取りされることで「言いたかったのに…」という経験をしてしまうことも事実です。
会話はする際、話した言葉をオウム返しすることで「あなたの話、私には伝わったよ」という意志表示をしてみましょう。
五月雨のような会話でなく、お互いが一呼吸おきながら話をするペースも素敵だと思います。
Point③たくさん褒めてあげましょう
「褒める」にもいろんな方法があります!
「褒める」と言っても、表面的な言葉で「褒める」のではなく、話してくれた内容を共有するという表現の方が適切かもしれません。
ごくごく当たり前のやりとりの中で「話言葉」に目を向けるのではなく「教えてくれてありがとう」など内容に目を向けての会話を意識してみましょう。
これは、皆さんの方が上手かもしれないのでアドバイスをください!
豆知識として、幼児の吃音を対象としたリッカムプログラムという治療プログラムがあります。詳しい手順は触れませんが、「褒める」という行為があります。子どもが話した言葉に「今スラスラ言えてたね!」などの言葉をかけながら、吃音の軽減を図っていく治療プログラムです。近年出た、幼児吃音臨床ガイドラインにおいてもリッカムプログラムは吃音の治療に有効であると示されています。
このように「褒める」という行為は吃音を潜在的に軽減する可能性があると言えます。
※リッカムプログラムは幼児(就学前)を対象とした治療プログラムです。幼児期以降への適応については2022年現在、研究段階であるので一概に適応できるとは言い切れませんのでご注意下さい。
Point④吃音のことを隠さない
吃音は悪いことではありません
「どうやったらつっかえなくて話せるの?」子どもから、こんな質問が来たら、どのような返答をされますか?
これは子どもの言葉で親に助けを求めるSOSだと思います。イケナイことという気持ちがあると意識させないよう話を逸らす方もいるかもしれません。その行動は子ども自身が親を頼りにくくなる行動につながってしまう可能性があります。
質問されたら、「吃音って言うんだよ」、「どんなものか一緒に調べてみよっか?」などと返答するのも良いと思います。大切なことは家族として、「あなたらしいあなたで良い」と本人を受け入れ、尊重することだと思います。
Point⑤話す場を確保してあげる
あえて話させないようにすることはNGです
これは、教育機関などを多く耳にします。学校の本を読む場面、日直など吃音があるからと「可哀想」と思い、その機会をとりあげてしまうことは、とても危険なことです。
小さい頃であれば「本を読まなくてラッキー」で済むかもしれませんが、青年期、成人になるに連れ人前で話す場面から逃げることが難しくなります。気持ちの中で「話したくないから、逃げよ」と思ってしまうと、結果として二次的な障害を引き起こす危険性があります。
無理にでも話す機会を設けてほしいというわけではなく、担任の先生や吃音のことをわかってくれる先生に相談してみても理解してもらえれば、その人の前であれば、本を読んだり発表したりすることへの不安が少しは減るかもしれません。
海外での紹介された事例
大人でも吃音が治るの?
吃音がある学生・大人の方々へ 大きくなって吃音が"治った"、"軽減した"と言われる出来事もあります
◆生活に変化があった
挙げられていた例としては、新しい職場で仕事を始めた。学校を卒業した。などです。
◆吃音に対する態度が変わった
挙げられていた例としては、話すことに自信がついた。自分の話し方をふりかえってダメだった、など思わなくなった。 吃音があるこどで他人の目線が気にならなくなった。などです。
◆社会的な支援を受けられた
挙げられていた例としては、吃音を変えようと自分の中で決心した。吃音のことを大切に思っている人に伝えて受け入れてもらえた。 大切な人から刺激をもらって、話すから逃げないようにしようとやる気をもらえた。などです。
すごく簡潔に書いたので、もう少しもう少し読んでみたいという方は下記に引用した文献を記載しているので見てみてください。
最後に
お伝えしたいこと
吃音のあるすべての方々へ "吃音"をめぐっては、今現在でも多くの議論があることは事実だと思います。 たとえば、「治療は無意味、治らない」という意見、「治療をしたら、吃音が軽くなった」という意見 このどちらも肯定することも、否定することもできません。これは、個人の思想であり、専門的な意見ではないからです。 言語聴覚士として、吃音の方々と関わらせていただいている者としては、一人でも悩みの種が軽くなる手助けをしたいです。 少しでも気になる方は、言語聴覚士に相談いただければと思います
参考文献・引用資料
1.菊池良和著,エビデンスに基づいた吃音支援入門,学苑社.2012
2.菊池良和著,福井恵子,長谷川愛,吃音Q&A 吃音のエビデンスを知りたい方へ2021
3.都筑澄夫,改訂 吃音.建帛社,2008
4.Katrin Neumann,"Spontaneous"late recovery from stuttering Dimensions of reported techniques and causal attributions,Jounal of Communication Disorders 81(2019)105915