構音=発音?の障害?

うまく発音ができない状態のこと

「発音」と聞いてどんなことを想像しますか?

・アナウンサー
・アーティスト(歌手)
・俳優・女優
・声優

などを想像した方が多いと思います。記載した職業に共有することは、言葉(声)を使って感情や情報を伝える職業ということです。

では「発音が悪い」「滑舌が悪い」とどのような状態になるのか

・相手に伝えたい内容が上手に伝わりにくい
・話すことに対して自信がなくなる
・話す場面で緊張してしまう

これらのデメリットがあります。これは皆さんに共有することでなく、あくまでも一例です。

つまり、発音するとは『自分が伝えたいことを伝え、相手にそのことを理解してもらうための情報伝達手段』なのです。

他の例を挙げると、『日本語しかしゃべることができない状態で一人で海外に行く』と想像してみてください。発音という情報伝達手段がないため、ジェスチャーを使用するなど発音に変わるとなる手段でこちらの意図や要望を伝えるのではないかと思います。

これら普段何気なく話していることは、私たち人間が持って産まれた発音という素敵な力の一つだと思います。ただ一つ、念頭においてほしいこととして会話・コミュニケーションの幅は多様というです。キレイな発音をすること以外にも、身振りや手話を使用したコミュニケーション、カードの受け渡しを行うコミュニケーション、機器を使用したコミュニケーションなど形は様々ということです。

前置きが長くなりましたが、ここでは発音(構音)に焦点を当てて解説します。

構音障害の原因

大きく3つに分類できます

◆形の問題
発音を行うために必要な唇、舌、口蓋に形の問題がある場合に該当します。専門的には器質性構音障害と呼びます。具体的な例として、口蓋裂、口唇口蓋裂、粘膜下口蓋裂、鼻咽腔閉鎖不全症、舌小帯短縮症、顎関節症、舌の切除などの問題により適切とされる発音ができない状態を指します。


◆運動の問題
発音を行うために必要な唇、舌、口蓋に運動障害が生じた場合が該当します。専門的には運動障害性構音障害と呼びます。具体的な例として、脳卒中(脳梗塞、脳出血、蜘蛛膜下出血)、脳腫瘍、神経変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、基底核変性症など)などの問題により適切な発音ができない状態を指します。


◆明らかな問題がない
発音を行うために必要な唇、舌、口蓋に形や運動の問題はありません。しかし、なぜか適切とされる発音ができていない場合に該当します。専門的には機能性構音障害(ここでは暫定的にこの名前を使用します)と呼びます。具体的には、発達途上の子どもが該当します。

◆ここに含んでいない問題
3点以外にも、発音に問題がある場合があります。それは発音に癖がついてしまっている場合と難聴の影響で発音した音がわからない場合です。この2つは下記に示します。

発音の癖?異常構音

現在、6つ程度確認されています

異常構音とは、本来の日本語にはない発音の方法で発音されている音声を指します。いずれの異常構音も適切な練習を行うことで治ります!以下専門的な言葉を含んだ説明になりますのでご了承ください。

◆声門破裂音
声帯や仮声帯を強く接することで声門を閉鎖し、それを急速に開放させて作る破裂音。聴覚的には軽い咳払いのように聞こえる。一般的には鼻咽腔閉鎖不全により口腔内圧が保てないため、その代償で構音点が喉頭のレベルまで後退したと考えられている

◆咽頭摩擦音
舌根ならびに仮声帯と咽頭後壁がせばまって作られる摩擦音。声門破裂音と同様の代償構音

◆咽頭破裂音
舌根と咽頭後壁との破裂音。声門破裂音、咽頭摩擦音と同様の代償構音


◆口蓋化構音
構音店が歯、歯茎である音で、本来舌尖や前舌で作られるのが、後方へ移動し舌背や口蓋で作られる。具体的にはさ行・ざ行やた行・だ行の音に多く見られる。か行に近い音、だ行はが行に近い音、さ行はヒに近い音として聴取される

◆鼻咽腔構音
鼻咽腔閉鎖機能は良好であるのにかかわらず舌が口蓋に接して口腔を閉鎖し、鼻腔で音を作るために「ん」が「くん」に近い音として聴取される。呼気はすべて鼻腔より出されるため、鼻をつまんだりすると音を作ることができない。い列やう列の音に見られやすい。

◆側音化構音
通常構音時の呼気は正中より出るが、構音時に下顎や口唇が側方へ移動し、舌が側方に寄って口蓋に接するかあるいは口蓋中央に接する。このようなときに、こきが口腔の側方から出て音が歪む。呼気の漏れ方には、口角の片側だけの場合と両側の場合がある。側音化構音になりやすい音はイ列音で、誤り方の特徴はキやヒに近い歪み音として聴取される


難聴による問題

発音の音声が聞き取れない

この問題は聴覚障害を持つ子どもに該当する場合が多いです。聴覚障害の影響で適切とされる発音が聞き取りづらくなるために生じる問題です。

特にさ行、チ、ツという音声が難しいです。
少し専門的な話をすると無声歯茎摩擦音、無声硬口蓋摩擦音が難しいとされています。この日本語音声の特徴として、周波数成分が高く聴力で聴取することが難しい、発音している発音の方法が理解しにくい影響があります。

子どものケースでは、発音を学習する機会が得られない、教える指導者がいない問題もあるため学習機会を損失している事例が多くいます。​

子どもの言い間違い

実は発音の問題ではないかも

「発音がうまくできない」見かけ上は「発音」という括りで表現されますが、実は問題の理由が異なる場合があります以下に例を記載します。

「しんかんせん」 → 「ちんかんせん」

「とうもろこし」 → 「ともうころし」

この2つの言葉、上は発音の問題で下は発音以外に問題があることがあります。鑑別については発音の検査を行いながら確認を行っていきます。
 

参考文献・引用資料

1.本間慎治編著,言語聴覚療法シリーズ7 改訂 機能性構音障害.建帛社.2014