産まれた時から1歳ごろ

母音(あ、い、う、え、お)

赤ちゃんが最初に出す声は産声(泣き声)で意識的に声を出しているわけではないので、生理的な発声と呼ばれるます。この段階では発音でなく発声と表記することが適切と言えます。

生後1ヶ月を過ぎるころには状況に応じた発声が見られるようになります。生理的な発声とは違い、笑ったり泣いたりなど発声を通した反応が見られるようになります。

生後3ヶ月を過ぎたころには、喃語(なんご)の使用が頻繁に見られ始めます。これまでの反応とは違い偶発かつ単発的であった発声が意図したときに出現する反応へと変わっていきます。

生後7〜9ヶ月ごろには、さまざまな音が発せられることが多くなります。偶発的に唇や舌を使った音が一音程度出現してきます。

生後1年が近くなると、自分の意志を伝えるための「発音」が出現し始めます。


1歳までの発音については、発声と表記した方が理解しやすいかもしれません。

1歳〜2歳代

パ行、バ行、マ行、ヤ行

この年齢は初語(初めて話す言葉)が出現する時期です。初語は音声と目的が結びついた有意味語の形式で見られます。特徴として、「ワンワン」「ブーブー」などの母音や唇を使った音声を繰り返す使用する同音反復が多いです。

この時期から出現する言葉は「発声」ではなく「発音」に該当し始める段階と思われます。

発音ではありませんが、この時期は子どもの中で急速にいろんな言葉を学習する時期です。いろんな物に興味関心を抱き、全身を使いながら体験・経験を重ねます。子どもの中で知っている言葉や聞いたことがある言葉を真似してみたり、話してみたりする時期でもあります。話すことができなくても知っている言葉もあるかもしれませんので過度な訂正はせず、言葉を使った遊びを一緒に楽しんでみることをオススメします。

3歳以降の発音

大まかな順番を記載します

この年代から、階段を登っていくように子音の獲得が始まります。
発音を獲得する年代を概観してみます。

◆3歳代
タ行、ダ行、ナ行、ガ行、チャ行

◆4歳代
カ行、ハ行

◆5歳代
サ行、ザ行、ラ行

このように発音の成長には順番があります。

上の年齢になるほど、発音の難易度が上がっていくので、年代が違う発音の言い間違いについては、焦らずに成長を見守ってあげましょう。
※自宅でできる練習については別の項目にて紹介します!

この時期は「発音が上手にできない」という相談が増加してきます。気になる場合は別項目に記載した相談先を調べてみましょう

お口の成長

観察してほしいポイント

お口の中は、いろんな器官によって構成されています。唇、歯、舌、頬といった器官がバランスを取り合いながら成長していきます。

幼い子どもにはいろんな習慣があります。成長をサポートする上で注意をしながら観察してほしい情報をお伝えします。

・おしゃぶり(指しゃぶり)
・口呼吸
・舌小帯が短い

この3点は発音の側面から見ても大切な部分です。以下3点が大切だと思われるポイントを記載します。

◆おしゃぶり(指しゃぶり)
指しゃぶり(おしゃぶり)は、赤ちゃんの心をなだめてくれる作用があると考えられています。しかし、その期間が長くなると歯並びに影響があることが明らかとなっています。

いくつか例を挙げると、上の前歯が前のほうに出てくる、上下の前歯に隙間ができる、噛み合わせが悪くなることがあります。。特に上下の前歯に隙間ができる開咬(かいこう)はおしゃぶりが原因となるケースが多いことが知られています。

できるのであれば、1歳半から2歳ぐらいまで。遅くても、乳臼歯が生えてくる2歳から2歳半ぐらいまでにはおしゃぶりなどを止めることが推奨されています。

※3歳程度を記載されている場合もあり、見解が一致していない部分があるという事実もあります。生まれつきの特性による違いもあります。お家での働きかけがうまくいかない場合や気になることがある際は、小児科か小児歯科に相談に行かれてみてください。

◆口呼吸
鼻炎や扁桃肥大で悩んでいる子どもに多いのではないでしょうか。周囲から見てもとても息苦しそうに見えると思います。鼻呼吸でなく口呼吸を行うことのデメリットとして、虫歯になりやすい、歯周病になりやすい、歯並び・噛み合わせが悪くなります。

口呼吸になってしまう主な原因として

・歯並び・噛み合わせのせい
・鼻炎や扁桃肥大のせい
・習慣のせい

これら結果として口呼吸が続くと、歯並びが悪くなったり、口の周りの筋肉が弱くなってしまう、虫歯や歯周病になるリスクが大きくなってしまいます。

大人の方でも、鼻炎を患われている方の中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、子どもの頃の口呼吸は鼻炎や扁桃炎といった病気がなければ習慣的に治すことができます。


◆舌小帯が短い
舌の裏にすじのような器官があります。これを舌小帯と呼びます。この舌小帯は成長するとともに本来の大きさより短くなり舌が動く範囲が口の成長と共に大きくなっていきます。しかし、この変化が起こらない場合は舌小帯短縮症と呼ばれる状態になることがあります。

舌小帯短縮症には舌を前に出した時に、舌の先端が少し凹んでいる所見が見られます。このように舌小帯が短いと、舌の動きが制限されてしまうことで正しい発音がしにくくなります。

舌を動かす練習をすることで改善する例もありますが、気になった場合は小児科・歯科へ受診して切除する必要があるかの適応を聞いてみましょう。
※舌小帯短縮症ではあるけど、切除する必要がない方もいらっしゃいます。

食べる力の成長

どんな風に成長するの?

赤ちゃん・子どもは、体の成長と一緒に口の中の構造や動きが大きく変化していきます。同時にご飯を食べることも上手になっていきます。ここでは、どんな順番で食べる力が成長していくかを解説します。
※概要を概観するだけですので、

◆食べる力の成長

1.経口摂取準備期
この時期は、原始反射と呼ばれる無識的に反応する特徴があります。最初は原子反射を活用しながらお母さんのおっぱいを吸うところから口食べる力の成長が始まります。

口の中にはおっぱいを吸うスペースや隙間があることで負担少なく食べる力を養っていくことができます。

3〜4ヶ月ごろになると指しゃぶりなどがみられ始めます。

2.嚥下機能・捕食機能獲得期(離乳初期)
この時期は名前の通り離乳が始まる時期です。この頃になると原子反射は弱くなっています。食べ方は口に溜め込みながら飲み込んでいくような食べ方をしています。

口の特徴として、下唇が内側に入ってくることで上下の唇を閉じて飲み込むことができ始めます。舌も前後の動きが出始め、それにつられる形で顎も動くようになってきます。

おおよそ5〜6ヶ月ぐらいに該当します。

3.押し潰し機能獲得期(離乳中期)
この時期になると、舌の前後運動だけでなく上下運動ができるようになってきます。舌が上下できるようになることで、食べ物を口の天井(口蓋)に押し付けながら潰すことができるようになります。柔らかい物であれば口の中で押し潰す力もあります。

皆さんがイメージする「咀嚼(そしゃく)」をこの時期が該当するかなと思います。

唇にも特徴があり、口角をひくような動きができるようになります。ご飯を飲み込むときに唇がしっかりと閉じるように飲み込む力も強くなってきていることがわかりますね。

おおよそ7〜8ヶ月ぐらいに該当します。


4.すり潰し機能獲得期(離乳後期)
この時期になると舌が左右にも動くようになってきます。これで、前後・上下・左右の動きを獲得したことになります。

咀嚼は唇をしっかりと動かす、歯ぐきで食べ物を潰す、口の左右どちらかで咀嚼をする運動も見られるようになり大人から見ても「しっかり食べてる!」という印象を受けることができるはずです。

おおよそ9〜11ヶ月ぐらいに該当します。

5.手づかみ食べ機能獲得期(離乳完了期)
この時期になると自分の手を使って食べ物を口まで運ぶことができるようになります。口から食べる際も口の真ん中から食べれるようになってきます。

咀嚼についても、前歯で噛み切ることができるようになる、首を動かしながらご飯を食べる様子が減る特徴も見られます。

おおよそ12ヶ月以降で離乳が完了している時期です。

6.食具食べ機能獲得期
この時期になってくると食事をするための土台となる口の力が完成してくる段階です。


歯の生えはじめは割愛していますが、発音する場所とご飯を食べる場所はどちらも同じ口です。小さい頃からじっくりと観察してみるのも成長を実感できて育児が楽しくなるかもしれませんね!

参考文献・引用資料

1.本間慎治編著,言語聴覚療法シリーズ7 改訂 機能性構音障害,建帛社,2014
2.日本歯科医学会,小児の口腔機能発達評価マニュアル
https://www.jads.jp/date/20180301manual.pdf
3.米密正美編集,新予防歯科学 第4版,医歯薬出版.2010