みなさまに知っておいてほしいこと

退院した後の支援が最も大切

これを読んでくださる方に周知していただきたいことがあります。 それは、「失語症のリハビリは病院でのリハビリでのみで完結することが非常に少ない」ということです。同時に病院を退院した後のご家族、施設職員、介護者とのコミュニケーションもその方にとっては重要なリハビリテーションになると言うことです。 失語症のある方のコミュニケーションパートナーとして、できる対応方法を解説します。

会話を先取りしすぎない

まずは自分の会話に目を向けてみましょう!!

実は私もしているかも?
会話しているときの自分のこと。

・相手が話そうとしている言葉をさえぎる
・自分のペースで話をする
・質問ばかりの一方向的な会話

普段の生活では何気なくしていることかもしれません。
失語症の影響で今まで通り話すことが難しい場合
会話する人からの配慮も求められます。

当てはまった方は以下のことを気をつけてみましょう

・言葉・身振りなどの反応が出てから、言葉を返す
・話題は1つに絞ってお互いで共有する
・質問は「はい」・「いいえ」や、ジェスチャーで伝えられるもの
・ゆったりしたスピードで話す
・抑揚を意識してみる

ささいな配慮かもしれませんが、会話という楽しい時間を
お互いの思いやりでつないでほしいです。

話題は一つだけにしぼる

話題をしぼると伝えたいことが予測できるかも

話をしたいのに、伝えたいことがわからない
ということが起きるかもしれません。

会話が成立しない経験が重なっていくと心のどこかで
「話たくない」「伝わらなくて辛い」と感じてしまう
ケースにたびたび遭遇することがあります。

まずは、1つ話題の中で、伝えたいことを予測したり
わかってあげながら、会話を楽しむところがはじめましょう

ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションって知っていますか?

簡単に説明すると、言葉以外で行うコミュニケーションです。
いくつか例を挙げると

・身ぶり手振り。ジェスチャー・表情・目の動きという動作
・あいさつ、抱きつく、触るという接触
・声の高低や強弱、リズムというパラ言語
・距離感や自分のスペースという空間行動
・メガネや服装という人工物
・照明や温度という環境要因

が挙げられます。

話している言葉の内容以外の要因として
耳で聴く要素、目で視る要素、体で感覚的に感じる要素、これらの要素を踏まえて相手に伝えることを意識してみましょう。

実物や写真を交えながら

よりわかりやすく相手に伝えられるように

「わかっているけど、ことばで伝えられない!」となるケースが多いです。
「トイレに行きたい!」となっても「トイレ」という言葉が出てこない。
そんなとき、写真やイラストなどをボードなどにまとめておくと
指差しで伝えることができます。
お互いの会話とサポートするために
身近なものや場所の写真やイラストをまとめた
本をつくってみるのも会話を行うポイントの一つです


参考文献・引用資料

1.藤田郁代・立石雅子編集,標準言語聴覚障害学 失語症学.医学書院.2015
2.波多野和夫著,言語聴覚士のための失語症学.医歯薬出版.2014
3.小嶋知幸編集,なるほど!失語症の評価と治療.金原出版.2010
4.鹿島晴雄編集,よくわかる失語症と高次脳機能障害.永井書店.2012